Side B - the essence of tomorrowland -
Special Interview About
Lee × TOMORROWLAND
今季、トゥモローランドは〈Lee〉とのコラボレーションを敢行。
英国コット ンの代名詞ともいえる「BRISBANE MOSS」の生地を纏わせました。
八日囿が今回の試みをインタビューしていきます。
- TOMORROWLAND メンズ担当
⼋⽇囿 圭太
トゥモローランド内で商品系に関わる多様な業務に従事。ウィメンズに携わっていた経歴もあり、広い視点を持ってものづくりを追求するスタンスは随一。- 株式会社エドウイン クリエイティブディレクター
細川 秀和
1990年入社。ジーンズの何たるかを、服飾史や文化人類学的なアプローチも含めて多角的に捉える生き字引的存在。温故知新なマインドで新たな価値観を模索する手腕は、業界内外で常に注目の的となっている。今に続くモダンなジーンズの先駆け
- ―以前にご一緒したコラボレーション(※過去記事)では「大戦モデル」にカシミヤ混の生地をチョイスするという手法を用いました。幅広い層の方にご支持をいただき、次の一手を望まれているお客さまも多かったです。
細川さん(以下、細川。敬称略):こだわりの強い方に人気の「大戦モデル」 をあのような形でブラッシュアップさせたのはトゥモローランドさんだからこそですよね。今回はアイコニックな名品である「WESTERNER」をチョイスされたので、我々としてもいよいよだなという印象でした。
―改めて〈Lee〉の生い立ちをご説明いただいてもよろしいでしょうか?
細川:取扱品の中にはワークウェアも含まれていましたが、その調達が不安定であったため、1911年に自らオーバーオールの生産を始めます。ワークウェアブランドとしての〈Lee〉ブランドが始動したのもその頃になります。
- ―数多くのエポックメイキングなプロダクトを生み出しているのは、そういったユーザーに寄り添う出自に関係があったのかも知れませんね。
細川:おっしゃる通り、マーケットニーズに応えるスタンスは当初からだといえます。〈Lee〉は現在だとツナギと呼ばれる「ユニオンオールズ」を開発。鉄道員や整備工など、上下にセパレートしていると捲れてしまうような環境下で働くリアルワーカーに絶大な支持を受けました。耐久性だけでなく、汚れを目立たせない効果があったヒッコリーストライプの名付け親でもあります。また、1927年にはフロントをジッパー仕様にしたオーバーオールである「WHIZIT(ウィジット)」をリリース。その後「101-Z」をはじめとするジーンズやジャケット等に幅広く採用していきます。ボタン留めだったフロント開閉部の仕様を変えたのは大きな変化だったことでしょう。
―洗うと縮む生地特性がある綿製品でジッパーフライにする事は困難だったことが想像できます。およそ1世紀前に実装された時はかなり画期的だったのでしょうね。
細川:使用するデニム素材に、世界で初めてサンフォライズと呼ぶ防縮加工を採用したことが背景にあります。イノベーションに積極的な〈Lee〉ならではだと思います。また〈Lee〉は通称「ジェルト・デニム」と呼ばれる、使用する糸の撚りを増やして強度も増したワークウェア向けのデニムを1925年にリリースしていますが、耐久性と穿きやすさを見事に同居させているこちらも画期的なデニム素材でした。そういった面も含め、モダンデニムの先駆けだったかと。
カウボーイのためのリアルクローズ
- ―今回は「WESTERNER」という〈Lee〉の中でも代名詞的な存在のモデルをベースにしました。
細川:ヨーク部分にフラップ付きの両胸ポケットが取り付けられたジャケットの意匠は〈Lee〉がイノベーターです。今もそのディティールは色あせることなく、世界中にファンを抱えています。それは1946年に生まれたRIDERS JACKETですが、ウエスト・ウィーブと呼ぶホワイトサテン仕様の「WESTERNER」が1958年に追加登場します。これはカウボーイの正装として開発された経緯があります。
―〈Wrangler〉もカウボーイ向けでしたが、共通点などはあるのでしょうか?
細川:それが似て非なるものなのです。あくまでも〈Wrangler〉はロデオウェア発祥ですので、プロライダー達にステージ衣装として着てもらうことを根底に開発されています。〈Lee〉はカウボーイ達のためのワークウェアであり、テイリーな実用品としての側面が強いといえるでしょう。どちらも耐久性やファッション性という両面を特徴として併せ持っているのですが、起点と細かいジャンルが異なる感じですね、
―先ほど正装用という話もありましたが、リアルカウボーイ達がドレスアップ用として馬上以外で着用していたのでしょうか?
細川:そうです。代名詞的なサテン生地も「汚れが目立つオフホワイト色のジャケットはワーク用ではない」という現れの1つでもあったようです。繻子織ならではの光沢やしなやかさ、目の詰まった堅牢性は後にトラッドアイテムとして東海岸のアイビーリーガーにも広く普及していったことでも知られています。
―タフな作業をする時も、馬から降りて繰り出す時にも〈Lee〉が選ばれていたという事になりますね。
細川:カウボーイにとってスタイリッシュでいたい、という要望は昼夜を問わなかったのでしょう。そんな名作に「BRISBANE MOSS」のコーディロイを選ぶあたり、さすがトゥモローランドさんといった印象を受けました。
- ―大手メゾンがこぞって採用する名門ファブリックメーカーならではのクオリティはさすがの一言。耐久性、保温性に優れ、重厚感のあるしっかりとした生地感はもちろん、何よりこの説得力がある光沢感と優しい肌触りが「WESTERNER」 にマッチしていると自負しています。
細川:〈Lee〉では60年代に「レターマン・コーズ」という商標でコーデュロイ製のジーンズ等をリリースしており、今でもレアなアイテムとして探している人は多いと思います。そういったヒストリーも踏まえて考えるとコーデュロイ素材との親和性も高いといえます。このコラボモデルが突飛な印象にならないのは、コーデュロイ素材を多く扱ってきた〈Lee〉のバックストーリーを咀嚼してくださって感心しました。
―これからも共に野心的なプロダクトを生み出していけたら幸いです。引き続きよろしくお願いします。
ITEM
- 〈LEE(リー)〉社定番のウエスターナージャケットを、英国の老舗ファブリックメーカー〈BRISBANE MOSS(ブリスベンモス)〉社の12ウェルのブリティッシュニードルコーデュロイで別注しました。しっかりとしたコシがありながら柔らかい肌触りが特徴。