Side B - the essence of tomorrowland -
Special Interview
INVERTERE × TOMORROWLAND
昨年、〈INVERTERE〉の代名詞であるダッフルコートをベースに別注したステンカラーコート。
⼤きなプロモーションを⾏わなかったにも関わらず、本質的な価値が⽀持され店頭から早々に姿を消した名品です。今回は更にアップデートして再登場させるに当たり、共に作り上げたアイメックスの根本さんに話を伺います。
- トゥモローランド メンズ商品部
久田 芳裕
トゥモローランド メンズ商品部。業務内容は店頭での接客、VMD、商品開発やショップマネージャーなど多岐に渡るユーティリティプレイヤー。フランス帰りのセンスは唯⼀無⼆。- 株式会社アイメックス 代表
根本伸広
世界の⾼名なブランドを取り扱いつつ、国内企画も担う「株式会社アイメックス」の代表取締役。⽇本におけるインポート⾐料の歴史を最前線で体感してきた⽬利き⼒は 常に注⽬の的となっている。洗練された質実剛健
- ―近年のトゥモローランド メンズは国内外の⼀流ブランドと共に、普遍的で本質的な価値を持つアイテムをご紹介するというスタンスを強めています。コートというカテゴリーで真っ先に思い浮かんだのが〈INVERTERE〉でした。
根本さん(以下、根本。敬称略):改めてご紹介させていただくと、〈INVERTERE〉とはラテン語で「ぐるりと向きを変える」という意味で、 彼らの代表作であるリバーシブルコートの事を表すブランド名です。当時、リバーシブルコートは⾮常に⾰新的な技術で、彼らはその⽣産の技術特許を幾つも保有しています。今でも創意⼯夫を怠らず常にブラッシュアップを続ける企業⾵⼟がありますので、御社とのコラボレーションも意欲的な姿勢で取り組むことができました。
―ダッフルコートはトラディショナルかつアイコニックな意匠と、良質な素材が⽣み出す存在感が際⽴つ名品だと思います。そこの良さを活かすことを念頭に⼊れていました。やはり、〈Joshua Ellis〉によるパイルカットヘリンボーンが持つ個性は随⼀という認識です。
根本:こちらは「A305」と呼ばれる特別な⽣地になります。80年代のアメリカントラッド、ミリタリー、ネイビー物などにみられる粗野な素材感の⽣地とは異なり、パリのセレクトショップ、メゾン、デザイナーブランドに愛されてきました。それゆえに、硬いだけでなく⼗分な柔らかさを共存させるための素材選びも⾮常に重要なポイント。⼀枚仕⽴てという製品構造上、⼗分に⽴体的な造形を作るために強い⽣地でありつつ、柔らかさ、ぬめり感など、それまでのダッフルコート、メルトン⽣地の概念を超えるものであることが必要だったという歴史があります。
―質実剛健なアメリカ物という佇まいではなく、どこか洗練された雰囲気を纏っているのはそういった出⾃があるからですね。
根本:フレンチトラッドという従来のトラッドから昇華したファッションコンテンツの中で、ある意味ラグジュアリーなダッフルコートを作る素材としての位置づけだったといえるでしょう。私⾃⾝もこの⽣業を始めた頃にフランスの ⽼舗トラッドブランド旗艦店に赴いた際、ダッフルコートが店内に14⾊くらい展開していて驚いたことが原体験として⾮常に印象深く残っています。
―私も⼀時期パリへ遊学していた時期がありますので、当時にその時代感の⽚鱗を感じることができたのは幸運でした。トゥモローランドでも⾊の展開は⼤事にしています。先シーズンのコラボレーションでは、最もキャッチーなイエ ローから完売しましたので、お客さまにこちらの意図が届いたのだと思えて嬉しかったです。
根本:イエローから在庫が僅少になってきているというお話を聞いた時には驚きました。決して安価なものでもないですし、最初はネイビーやグレーといった定番カラーからというのがセオリーだという先⼊観がありましたから。やは りトゥモローランドさんのお客さまはファッション感度が⾼い⽅が多いのでしょうね。
レガシーを継承していく
―もう少し⽣地についてお聞きしてもいいでしょうか?
根本:〈Joshua Ellis〉はイングランド・ヨークシャーにて1767年創業の名⾨ファブリックメーカーで、「世界⼀⾼級で⾼品質な素材を最⾼級の天然繊維で織り上げる」という哲学があります。⾁厚で暖かさもありながら⾮常に軽い着⼼地が魅⼒ですね。発⾊にもこだわり古い機械で織っていますので、どうしても時間はかかってしまいます。縮絨にかかる時間は通常のメルトン⽣地の⽣産以上。きちんとした仕上がり、起⽑⾯を⽣むため、下地となる⽣地は時間をかけて経緯を注意深く縮絨する必要があります。
―あのヘリンボーン柄は所有欲を満たしてくれる美しさです。量産化しながら、⾼いクオリティーを保つのはすごいですね。
根本:特に⽇本マーケットのカスタマーの⽬は厳しいですから、私も〈INVERTERE〉や〈Joshua Ellis〉側と⼆⼈三脚で共に良化していけるためのコミュニケーションを重ねてきました。⼯場の維持や職⼈の後継者などは今後も継続した課題ではありますが、レガシーとも呼べる優れたプロダクトは多くの⽅に認知していただき引き継いでいきたいと考えています。
―そのレガシーと我々の定番であるステンカラーコートをかけ合わせて、新たな魅⼒を内包した⼀着が完成しました。共に進めていく中でどのような印象を持たれましたか?
根本:両社の定番品を折衷することで、ありそうでないものに仕上がったのではないでしょうか。ダッフルコートはフードも特徴的なディテールの1つですが、それを排しても漂う〈INVERTERE〉らしさは不変でしたし、前⾝頃のポケットもオリジナルへの敬意を感じます。何より第⼀ボタン部分にトグルを採⽤するアイデアには脱帽しました。
―トラディショナルなものをどうアジャストするのかによって真価が問われます。連綿と受け継がれてきた名品を下敷きにするのであれば、その良さを我々なりに解釈して前進できるものにしたいという思いはありました。歴史をご存知 の⽅はもちろん、これを機に多くの⽅に〈INVERTERE〉の魅⼒を知っていただけたら嬉しいですね。
根本:今季はご要望のあった襟部分のフィット感を⾼めました。重厚な⾒た⽬に反したライトな着⼼地に加え、ストレスを感じにくい仕上がりに進化したかと思います。
―現状に満⾜せず、常にブラッシュアップをトライしていくスタンスは共鳴していますね。タイムレスにご愛⽤していただける⾃信作になったかと思います。
根本:今後もトゥモローランドさんとは様々な⽅でコラボレーションさせていただきたいです。まだ広く知られていないマイナーブランドや⼯場などを共に⼤きくしていくパートナーとして、これからも弛まぬ努⼒を続けていきます。
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