TOMORROWLAND

BRIDAL Special Interview〈YUKA HOJO〉


  • TOMORROWLANDの『BRIDAL RING ORDER』。
    さまざまなゲストを迎え、魅力をお届けしていきます。

  • 今回は〈YUKA HOJO〉のデザイナー 北條由香さんを迎え、TOMORROWLAND ジュエリーバイヤーの和田麻里子との対談でオーダージュエリーの魅力を掘り下げます。


  • YUKA HOJO・デザイナー
    @yukahojo_jewelry

    北條 由香
    15歳で単身渡英。帰国後、日本宝飾クラフト学院卒業後、ブライダルリングを専門に、多数のブランドのプロデュース、デザインを手がける。2014年、ジュエリーブランド「YUKA HOJO」をスタート。デザイン、原型制作、ブランドディレクションを担当。

  • TOMORROWLAND バイヤー
    和田麻里子
    @mariko.wd

    TOMORROWLANDのジュエリーバイヤーを担当。 パッと目を引く華やかなスタイリングに合わせるアクセサリー遣いは唯一無二のバランス感覚。凛としながらも華やかさと大人な遊び心がチャームポイント。

  • Interview

  • ー ジュエリーデザイナーになるまでに、15歳で渡英しているプロフィールを拝見しました。イギリスと聞くと、ジュエリーなど含めてクラフトマンシップを感じる国ですが、ものづくりに興味があってのことだったのでしょうか?

  • 北條:きっかけは、ものづくりを仕事にしていた大好きな祖父が、「若いうちに本物を体験してきなさい。行くなら絶対イギリスがいい」と勧めてくれて、中学3年生の時に、現地の全寮制の学校に入りました。留学してすぐに衝撃を受けたのが、同世代の学生が、みんな自分の好きな事に対して、楽しそうに真っ直ぐに努力していたこと。日本では勉強せずに遊んでいる事がかっこいいと信じていたので(笑)初めて自分と向き合うことになって、幼い頃から手を動かすことに夢中だったことを思い出しました。美術の授業を選択して、みんなのクリエイティブな姿勢に影響を受けて、消灯後もベッドの中で勉強するまでに変わっていきましたね。

  • ー そこから実際にジュエリーデザイナーとしての仕事に興味が湧いたきっかけは?

    北條:帰国後、ふと目にした雑誌で紹介されていたジュエリーの教室が気になって、初めは習い事として通い、その後本格的に専門学校に入りました。
     職人になりたかったので、まずは結婚指輪を作る工場に就職しました。そこでは、主にリングの内側に刻印を入れる仕事を担当していたのですが、1日に100本くらい手作業で刻印を入れていくんです。アスリートみたいに(笑)。工場での仕事は、主にこの刻印入れだけだったので、半年が経った頃にやっぱり自分で指輪を作りたいと思って会社を辞めました。でも、結果的にその経緯を理解した社長が「それじゃ、デザインをしてみるか」と言って下さって。この工場が結婚指輪を作っていたことをご縁に、改めてフリーランスとして契約しなおして、ブライダルのジュエリーデザイナーとしての第一歩を踏み出しました。


  • ー そこからご自身のブランドを立ち上げる経緯は?

    北條:毎年200型くらいを担当して、ありとあらゆるデザインを描きました。ブライダルリングって、幅2,3mmの小さな宇宙に、大きな愛をのせて届けるもの。毎回新しいアイディアを考えるのは大変でしたが、振り返ればその経験があるからこそ今があると思っています。そこで10年間働いたのちに、さまざまな企業のブランドの立ち上げ時にデザイナーとして入るようなスタイルで数年間を過ごしました。でも、ある日、ふと自分の手でジュエリーを作りたくてこの仕事を始めたのに、全然やれてないなと気がついて。そのタイミングで、潔くすべての仕事をやめてみたんです。それが10年前のことですね。

     和田:すごい決断力。

  • 北條:単純に、全部やめてみれば、あとは本当に自分が夢中になれることだけが待ってると思ったんですよね(笑)。でも特にブランドのロードマップを描いていたわけではないので、友人に相談していたところ、ある日「行きつけの美容院で展示会をやってみたら」と言ってもらえて。初めて自分でサンプルを作って展示会をしたら、友人や美容院のスタッフさん達がオーダーをつけてくれました。また他の友人2人が偶然にも同じ日に「由香にはクラウドファンディングがいいと思うよ」と連絡をくれたんですよね。そこで、プロジェクトを立ち上げて改めてぬくもりを感じるような手作りの結婚指輪を制作し始めて。その後、初めてニュージュエリーに出展したことが〈YUKA HOJO〉にとって大きなきっかけになりました。

  • 和田:最初のうちは、オーダーが入ったもの全てを自分で作ってらっしゃったんですか?
     
    北條:そうですね。自宅の片隅で作っていました。当時はショールームがなかったので、カフェで待ち合わせてサンプルをご紹介したり、新潟のお客さまと中間地点の長野で会ってお渡ししたり(笑)。やっぱりいまも変わらず、お客さまがふたりだけの大切な指輪に選んでくださっていることがブランドにとって一番のモチベーションになります。現在は、原型を私が作り、愛がいっぱいの素敵な工房さんとのチーム体制で、1本1本職人さんに作っていただいています。〈YUKA HOJO〉があるのは、本当に関わってくださる方全員のおかげです。

  • ー 改めてブランドコンセプトについて教えてください。

    北條:「Light inside you.」というコンセプトのもと、みなさん一人一人の心の中に一番美しいものがあるということをリングを通して伝えたいです。もうメガホンで世界に叫びたいくらいに(笑)。誰しも内側にはいつも綺麗な愛が流れていて、静かで平和な場所がある。耳を澄ませて、そこにつながって、ふたりの想いが響き合えば、世界はもっと愛に溢れていくんじゃないかと思っています。〈YUKA HOJO〉の指輪に触れて何か感じていただけたら、ほんのちょっとだけ心が動いて、その真ん中の場所に近づいてもらえたら。そうした想いを込めて、リングの一つずつに、名前とストーリーをつけています。

  • ー インスピレーションはどのようなところから?

    北條: 完全に自分の内側からですね。日常でふとした時に感じるかたちにならない感情が湧きでてきて。空気中に浮かんでいる愛の種のようなものが、その感情をたよりにパッと自分の周りに集まってきて、気づいたらデザインのアイデアが形になっています。自分にしか分からない瞬間なので、言葉にするのが難しいのですが。自分で考えたり作ったりしている感覚はなくて、まるで自分が完全に透明なただの通り道になる感じです。愛で胸がいっぱいになって、心も体も楽器のように振動して。時々作っている時に涙が出てくるほどエモーショナルになります。お客さまが感動してくださるのも、もしかしたらそうした感情に共鳴してくれているのかなと感じています。

  • 和田:そうしたブランドの想いに惹かれて、今回はじめてお取り扱いをさせていただきました。先ほどおっしゃった通り、リングの中で表現できることは洋服に比べて限られていると思うんです。つまり究極のシンプルさの中に、ブランドらしさを表現するのって難しいとも言えます。これまでトゥモローランドでお取り扱いしてきたブランドとは、また〈YUKA HOJO〉のリングは一見すると違うテイストのように感じるかもしれないですが、しっかりとした世界観に惹かれるお客様は多いように感じたんですよね。


  • ー それぞれのリングについて教えてください。

    北條:同じ空の下にいるけれど、出会う前はお互いの存在を知らずに流れているふたつの流れ。2人が出会って作り出す1つの大きな流れが、幸せな場所につながっていくように願いを込めたリングが "CURRENT" 。いびつだけど愛おしい、そんな人の人生を表現したものなので、原型は定規を引かずにフリーハンドで削り出しています。柔らかくて、美しい陰影が特徴のリングです。

  • "MOON SONG" は最近作ったリングです。これは、優しい月明かりの下、大好きなひとと交わす、言葉のいらない会話を「月のうた」に見立てた指輪です。月を見て美しいと感じたり、会えない日は、空を見上げて恋しく想ったり。大好きなひととの間にふと訪れる、言葉のいらない静かな時間ってありますよね。相手に身を委ねて、心地よくて美しい瞬間。この感情って、きっと昔の日本人でも、別の国、遠い未来の別の時代でも、誰かが誰かを愛しく想う時、ずっと変わらず共有できる気持ちなんじゃないかと。そんな普遍的で永遠な想いをかたちにしたくて作りました。ふっくらとしたカーブで優しい月明かりを表現しています。ボリューム感とつけ心地がとても心地よいリングです。

  • 好きになるひとって、どこか懐かしくて、自分と似ていると感じたり、一緒にいればいるほど、びっくりするくらい色々な面を発見して、面白かったりしますよね。日々発見する小さな愛しいくせや、シンクロニシティで初めはなんとも思っていなかった相手も、小さなサインが積み重なってかけがえのないひとになっていく。"SIGN" は、そんな大切なひとに気づく、この人だよと教えてくれる矢印をモチーフにしたデザインです。シンプルな形のなかに、やすりのあとを残すことでユニークな光沢感がうまれ、独特の質感に仕上がっています。経年変化も楽しんでいただけるデザインです。

  • 和田:一番思い入れが強いものは?

    北條:1本1本どれも同じように思い入れは強いのですが、"PASSAGE OF TIME" はブランドを立ち上げて一番最初に作った1本という意味では特別かもしれません。ハンマー仕上げが特徴で、てしごとだからこその、この繊細で柔らかい質感が生まれます。ひとつひとつ職人さんが手作業で槌目を打つので、ふたつとして同じ柄はなくて、世界で1本だけのお二人だけの指輪になります。


    「時間の通り道」という意味の "PASSAGE OF TIME" 。ふたりで歩く足跡を槌目(つちめ) で表現しています。ものづくりをやっているからかもしれませんが、時間の積み重ねにとても価値を感じて、そこに美しさを感じます。おふたりの想い出がこの指輪に刻まれて、時間を重ねることに、愛が深まっていく。お客さまがおじいちゃん、おばあちゃんになった時、この指輪がどんなふうに変化しているのか、想像するだけでキュンとしますね。

  • 和田:特に "PASSAGE OF TIME" は、どうやって職人さんに同じ仕上がりのリングを作っていただいてるのか気になります。

    北條:職人さんと想いを共有することを大切にしています。てしごとの魅力ってなんだろうと考えたのですが、やっぱり温度が伝わることなのかなと。人の手のぬくもりって本当に偉大ですよね。誰かを温めることもできて、癒すこともできて、繋ぐこともできて、生み出すこともできる。揺らいでも、はみ出しても、曖昧なまま大きく包み込むことができて。おふたりの想いを表すものであってほしいですし、きっと作っている側も、そこに魅了されて作り続けるように感じます。小さい頃から祖父と手が似ているねと言われて育ってきて。祖父は、電球を作って人の生活に灯りをともしていたそうなのですが、私は指輪を作って、人の心に灯りをともしていきたいです。

  • 和田:今後、ブライダルリング以外にも挑戦してみたいことはありますか?

    北條:パールに興味があります。パールって海の中で育まれて、月の満ち欠けに影響を受けて、エネルギーをまとっているところが、土の中で育つ鉱物と全く違う性質のものだなと気づいて。また、最近真珠の養殖の勉強に行ったのですが、本当に赤ちゃんから子供を育てるように、大事に大事にされて、気の遠くなるような手間と愛情がかかっているんです。エネルギーを秘めている感じが、人間が持っている内なる美しさに共鳴するように感じて、ブライダルリングとはまた違った角度から、メッセージを発信していけたらいいなと考えています。





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