Side B - the essence of tomorrowland -
Special Explanation
Willis&Geiger × TOMORROWLAND
〈Willis & Geiger〉の名作ジャケットを、TOMORROWLANDの解釈で現代的に昇華させた別注が完成。
今回は〈THOMAS MASON〉の高密度ファブリックを採用し、都会的なエレガンスを追求しました。
その魅力を歴史とともに紐解いていきます。
本格的なアウトフィッターがステイタスブランドへ
- 1902年、北極探検家であったベン・ウィリスによって創設された本格アウトドアブランドの〈Willis & Geiger〉。第26代大統領セオドア・ルーズヴェルトのアラスカ探検装備提供、アメリカ軍アルプス山岳隊への防寒服納入などを経て、実用的なフィールドウェアの作り手として名を上げていきました。1928年に入り実業家ハワード・ガイガー氏が経営に加わったことで、今に続く〈Willis & Geiger〉が設立されたのです。
1930年代、アメリカ東海岸の上流階級にとって、サファリは単なる探検だけではなく優雅なリゾート旅行でした。彼らは雄大な大自然を舞台にしながらも、仕立ての良い服を纏い、贅沢な時間を楽しんでいたのです。セレブリティ界隈に顔が広いガイガー氏の人脈もあり、一種のステイタスブランドとして羨望の的となりました。
近代アメリカン衣料の持つ大量生産・最大公約数へのフィットというアプローチになる以前の、顧客のために最高のプロダクトを贅沢に作るスタンスを徹底。英国テーラーリングの技術を投影したパターンやデザインを下敷きに、素材や付属品に至るまで妥協なく作り上げられた名作を数多く揃えています。そんな選ばれた人々のために、誕生したのがサファリジャケット。贅を尽くした仕立てと機能美が融合したこの一着は、冒険のロマンと優雅な時間を知る者の象徴だったのです。
ヘミングウェイによってカスタムされた名作
- オリジナルモデルとなるサファリジャケットは340 cotton bush poplin(コットンブッシュポプリン)素材を採用。亜熱帯地域であるアフリカ大陸のブッシュ(森林・潅水地帯)で快適に過ごせるよう、蚊や蟻、枝から身を守り、高い速乾性を兼ね備えた高密度ファブリックです。これは多くの富裕層を顧客に持つハンティングショップである〈Abercrombie & Fitch〉の依頼を受けて、〈Willis & Geiger〉が開発しました。
このベースモデルに、かの高名な文豪であるアーネスト・ヘミングウェイが個人で別注したのが、所謂ヘミングウェイジャケット。アフリカの大地を愛し、生涯にわたってサファリ旅行を楽しんだ彼が、“実用性とエレガンスを兼ね備えた一着”を求めたのが誕生の経緯です。当時の最高峰プロダクトであった〈Willis & Geiger〉のサファリジャケットを自分仕様でオーダーし、後年にも語り継がれる名品が誕生することになりました。
ヘミングウェイに限らず富裕層がこぞってカスタムを依頼している状況の中、彼も自身のこだわりを存分に詰め込んでいます。ウエストベルトで締めるのが面倒だからとゴムシャーリングに変更し、愛用するライフルマガジンやメガネ用のポケットまで追加。センターベントやインパーテッドプリーツなどといった、優雅さと動きやすさを両立させた意匠も施されています。彼にとって、サファリジャケットは単なる実用服ではなく、旅の余韻を纏うための一着でした。知的階級がサファリに求めたのは、冒険のロマンと優雅な時間の両立。まさにその精神を体現したジャケットといえるでしょう。
今へと受け継がれる、優雅なライフタイルを体現
- 歴史あるプロダクトを現代へと紡いでいく手法として、〈THOMAS MASON〉をチョイスしました。高密度に打ち込んだ肌触りとハリコシに優れた生地は世界最高級のクオリティとして名高く、その高いクオリティは英国ランカシャーで創業した名門シャツ生地ブランドならでは。サファリの概念に今日的なファッションの要素を過不足なく加え、軽く羽織っても存在感と説得力のある佇まいに昇華させています。
かつてサファリが特権階級の優雅な遊びであったように、そのエッセンスやスタンスを現代的に解釈し表現。都会での洗練された装いとして今日的に再構築しており、単なる復刻品に終始していません。例えばエポレットを排したのも、ジャケットとしての洗練されたシルエットを際立たせ、レイヤードの着こなしに配慮したものです。デザインを含めたオリジナルの完成度が高いからこそ、カラーによって印象が大きく変わるのも魅力の1つ。特にストライプは柄合わせの精度が極めて高く、細部にまで職人技が宿るポイントです。立体的なフォルムや、シャーリングによる自然なシワまで計算された仕立ては見逃せないディテールとなっています。
上澄みだけを掬った別注ではなく、受け継がれてきた文化や背景までも咀嚼した渾身の一枚に仕上がりました。ゆとりのある暮らしと余暇を愉しんでいた富裕層がこだわった実用的な作りと、そのライフスタイルに合わせた贅沢なファッション的見地が同居する出色の完成度となっています。
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