TOMORROWLAND

Side B - the essence of tomorrowland -


  • Special Interview About
    Wrangler × TOMORROWLAND


  • 〈Wrangler〉との別注をリリースするトゥモローランド。
    「FOX BROTHERS」のフランネル素材を載せた意欲作となりました。
    ⼋⽇囿が今回のコラボレーションの深淵なるバックストーリーをインタビューしていきます。

  • TOMORROWLAND メンズ担当
    ⼋⽇囿 圭太


    トゥモローランド内で商品系に関わる多様な業務に従事。ウィメンズに携わっていた経歴もあり、広い視点を持ってものづくりを追求するスタンスは随一。


  • 株式会社エドウイン クリエイティブディレクター
    細川 秀和


    1990年入社。ジーンズの何たるかを、服飾史や文化人類学的なアプローチも含めて多角的に捉える生き字引的存在。温故知新なマインドで新たな価値観を模索する手腕は、業界内外で常に注目の的となっている。


  • デザイナージーンズの元祖


  • ―3⼤ジーンズブランドの中でも特に異彩を放っているのが〈Wrangler〉かと思います。改めてブランドヒストリーから教えてください。

    細川さん(以下、細川。敬称略):):〈Wrangler〉は1947年に始動した⽐較的新しいブランドです。戦後にできたこともあり、すでに存在した数多のジーンズとは異なる個性を持って市場参⼊した経緯があります。もちろん、1889年頃から複数のワークウェアメーカーの誕⽣や統合などを経ており、前⾝となるのは1904年設⽴の「ハドソン・オーバーオール・カンパニー」です。1919年には「BLUE BELL」に社名変更しています。

    ―今も〈Wrangler〉ロゴの上に⼊っている⻘いベルのマークはその名残りだったのですね。

    細川:元々の「BLUE BELL」はワークウェアに特化した展開をしていました。やがてカウボーイマーケットに向けたウエスタンウェアブランドとしてスタートしたのが〈Wrangler〉ということです。特筆すべきは、世界初のデザイナージーンズだという出⾃ではないでしょうか。

    ―かの有名なロデオ・ベン・リヒテンシュタインがデザインを担うことに繋がっていく流れですね。

    細川:そうです。彼はロデオ・サーキット中のカウボーイ達向けに誂えた⾐装のデザインテーラーをしており、⾮常にタフな作りをキープすることはもちろん、ステージとなる会場で映えるデザインワークが随所に施されているのが特徴です。アメリカン・ヒーローであるカウボーイ達をよりスタイリッシュに演出する必要性からディテールが構築されていったといえます。



  • ファーストモデルとして完成した名品をチョイス


  • ―実⽤品としてラギッドな堅牢性を追求してきたジーンズが、〈Wrangler〉によってファッション性を獲得していくというのは興味深い歴史です。今回の別注ではそんな黎明期の名作を選ばせていただきました。

    細川:パンツはブランド誕⽣の年にリリースされた「11MW」と呼ばれる⼀本になります。こちらは今に続く〈Wrangler〉ならではの特徴を備えた基準とも呼べるモデルになっており、その仕様は「7アイコンズ」と呼ばれていま す。

    ―その7つの特徴をご説明ください。

    細川:まずは「①ロープロゴボタン」。ブランドアイデンティティを⽰しています。次は「②ロデオ・ベン ウォッチポケット」です。通常はコインポケットと呼ばれるウエストの前側右下の⼩さなポケットは、懐中時計を⼊れられるように少し⼤きく深めにできているというのが特徴となっています。続いて「③セブンベルトループス」。ベルトループは⼀般的には5本のところ、7本ついています。これは⾺に乗っている際にずれないようにするためです。次はライディング中の⼯夫から⽣まれた「④リバースフーリーフィールドヨーク」という仕様。これはヒップポケット上のステッチが通常とは逆の⼭⾼といわれる縫製でできています。ヒップポケットからずり上がってきたものが引っかかるような仕様になっていまして、とてもカウボーイ的なディテールだと⾔えます。 そして「⑤ノースクラッチリベット」。ヒップポケットを⽌めるリベットが⾺の鞍を傷つけないようにフラットなデザインにしています。次はバックポケットにセットされた「⑥ロープロゴのレザーパッチ」。 最後は「⑦サイレントWステッチ」と呼ばれトレードマークでもあるヒップポケットのWステッチです。これはサイレントダブルと呼ばれていまして〈Wrangler〉は頭⽂字のWを発⾳しないのでこの呼び名になったと⾔われています。

  • ―どこかドレッシーな印象を受けるのはそういったシルエットの妙技も奏効していると分かりました。「FOX BROTHERS」の本格的なフランネル素材を⽤いることで、その凄味も増しているように⾒えます。

    細川:ドレス分野で⻑い歴史がある定番の上級素材でありながら、英国らしい質実剛健な経年変化も楽しめそうな点はアメリカ⾐料と通じるところもあるでしょうね。

  • ―さらに今回はセットアップでの着⽤もできるよう、共地でジャケットも仕込みました。ジョン・レノンが愛⽤したことでも知られる「111MJ」にはどんな特徴がありますか?

    細川:「11MW」と同時期にリリースされたモデルですので、セットアップでの着⽤は歴史的に⾒てもベストフィットです。何ならこの上下がカウボーイ達にとっても基本のコーディネートだといえます。ブランド初のデニムジャケットとして⽣まれたものですが、すでに完成されたシルエットとディテールを備えており、〈Wrangler〉らしさが醸し出ている記念碑的な⼀着となっています。特徴的なのは背中側の腕の付け根にセットされたアクションプリーツ。ロデオ競技における運動性を担保するために備えたものですが、この時代ですでに実⽤化していた事実には驚きを隠せません。通称マルカンと呼ばれる前⾝頃にあるプリーツを⽌めるバータックやウエストにあるサイドアジャスターなども実にアイコニックな意匠です。

  • ―グローブをしているカウボーイのためにフロントポケットがスナップボタンになっていたり、実⽤性に関しての追求に抜かりがないと感じました。それでいて現代のファッションにも馴染んでくれる⾼い完成度は本物だからこそ。

    細川:エレガントなスタイリングが得意なトゥモローランドさんならではの、懐が深いラインナップになったのではないでしょうか。〈Wrangler〉は冒頭にもお話した通り、実⽤ワークウェアとファッションという⼆⾯性を併せ持った独特の存在。それぞれ単品での着回し⼒も⾼いので、カジュアルの格上げに⼤活躍してくれそうです。何より、おそらく⼆度とこのような野⼼的なプロダクトはリリースされないかと思いますので、後で「⼊⼿しておけば良かった」とならぬよう前向きな検討をおすすめします(笑)



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