SUPER A MARKET

SETCHU - Special Interview -



  • スーパー エー マーケット 青山にてSS24コレクションよりお取り扱いがスタートしたブランド〈SETCHU(セッチュウ)〉。

    今回は、デザイナーの桑田悟史氏に貴重なインタビュー。
    服作りのきっかけ、ブランドに込められた想い、そして今後の展望についてなど、じっくりと語っていただいた。






    「服に囲まれた幼少期の原体験と、販売の最前線で得た感謝の気持ちが今もベースにある」

    - 叔母がピエール・カルダンのアシスタントをしていたこともあり、幼い頃から家には洋服が溢れているような環境で過ごしてきました。服を解体し再構築するのを楽しんでいたことで、自然と仕組みを理解する土台になったのでしょう。他の子はプラモデルやTVゲームで遊んでいましたが、私はものづくりへの好奇心が強かったのかと思います。
    19歳のときに某セレクトショップで働き始めます。実はセント・マーチンズにも合格していたのですが、その段階では家族の反対や自身のビジョンがまだ固まっていなかったこともあり、結果的に日本のマーケットを知れることになったのは非常に有益でした。
    当初、まずはカジュアル部門で販売をするものだと思っていましたが、配属先はクロージングとインポートがメインのセクション。世界中から集められた錚々たるブランドや、ドレスラインを通して洋服についての知識を得ていきます。先輩方は非常に博識で、ここでの切磋琢磨は私のベースの1つになっているかと思います。何より実際に店頭でお客さまに向き合い、接客を通して付加価値を提供する経験を重ねられたことは大きく、ファッションビジネスに携わる上で今も欠かせないものになっています。
    当時、私の接客で非常に高価なアイテムが売れた時に、何とも形容しがたい罪悪感を覚えたことがあります。「本当にこのプライスに見合うご案内ができたのだろうか」という自問自答です。家族や同僚にも相談する中で、「もっと勉強をしなくてはいけない」という結論に至りました。素材や生産背景、デザイナーの思いなどをインプットし、適宜にアウトプットするようにするためには経験と知識が更に必要だと。
    また、懇意にしていただいていた顧客さまがお亡くなりになり、お母様がいらして「桑田さんが紹介してくれる服やコーディネートの提案をいつも楽しみにしていました。ありがとう」とお伝えいただいた事がありました。人と人の通じ合い、御縁など、関わってくださる方々への感謝を忘れないこと。加えてチームワークで進めていく考え、いかに感動を与えることができるのか。こういった今に続く矜持めいたスタンスはこの時期の経験があるからこそです。



    「どこの国でも通じる国際人になる、ということ」

    - その後は世界へと目を向け、ロンドンのサヴィル・ロウでテーラリングを学びながら、改めてセント・マーチンズに。そして様々なブランドや人と関わりながら、約20年間の研鑽を積んでいくことになります。
    対世界という意識と覚悟を持って踏み出す際に心に留めたのは「世界のスタンダードを知る国際人であること」。異国と渡り合うには否が応でも自身のアイデンティティやメンタリティと向き合う必要があります。文化や歴史を伴った自分のバックボーンが確立していないとスタートラインにも立てません。グローバルな局面で通用するようになるためには、ファッションだけに特化しているだけでは駄目なのだと思います。常に探究心を忘れずにいようというのは今も大切にしていますね。



    「ファッションはチームワーク。コミュニケーションが〈SETCHU〉を生む」

    - ブランド名に掲げた「折衷」という言葉には、「両方の極端を捨て、ほどよいところをとること。いろいろな物からいいところをとり、一つにあわせること」という意味があります。この概念は寛容性や革新性も兼ね備えており、和を大切にしてきた日本人だからこそ身に付いているものだという気がしていて。私は自身の名前を冠したブランドにはしたくなかったですし、物や人、考え方や文化をかけ合わせて共存させ、イノベーティブを起こすという概念を永続的に残していきたいと考えています。欧州では私を見かけた方が「KUWATA!」ではなく「SETCHU!」と呼びかけてきます(笑)。
    デザイナー個人だけにフォーカスされることを是としていないので、一過性のものではなくじっくりと浸透していって欲しいと願っています。例えるならアップル製品のように、同一の価値観と世界観を維持しながらアップデートしていく感じに近いかも知れません。それと同時に老舗ワイナリーのような深く根気強く熟成させるのも並行していく。これも1つの「折衷」でしょうね。
    ファッションはチームワークです。一人のクリエイティブで成立するものではなく、コミュニケーションを起点にした発見や試行錯誤が大事。アイデアの種が芽吹き、世の中に出るまでには多くの過程があります。きっとスティーブ・ジョブス個人だけではMackintoshもiPodも流通しなかったでしょう。服は誰かに袖を通してもらってこそ。手に取っていただいた方がそれぞれのアレンジで楽しんでもらい、そのフィードバックが新たなクリエイションに繋がる循環を構築していきたいです。







    「クリエイションのゴールに向かい試行錯誤を楽しむ」

    - 世界的なパンデミックを経て、物事を本質的に捉えることが見直されたのは間違いないでしょう。先行きが見通せない状況の中、世間ではどうしてもネガティブな感情が先行しがちだったかと思いますが、私はある種のチャンスだと捉えていた部分があります。土台を作るための期間と思い、プラス思考で取り組みようにしていました。
    アゲインストな状況の中でブランドを始動させるにあたり、工場を探すところからスタートしています。シグネチャー的なプロダクトである折り紙ジャケットを考案し具現化するための工程が非常に難しく、どこに行っても断られてしまったのです。足繁く説得することに骨を折ることになりました。何度も我々のコンセプトや考えを話し、最終的には職人さんが「何か面白そうだ」と思ってくれたことで完成させることが叶ったのです。やはりコミュニケーションを媒介としたクリエイションの過程を、どのように楽しんで積み上げていくのかが大事。そしてブランドの定番的なアイテムは様々な角度から検証し、改善していくことで永続性を得るようにしたいと考えています。職人さんが繰り返し作ることで完成度も上がりますし、ロングスパンであればより良くするための創意工夫を得る機会が増えますから。



    「コミュニティでのエンゲージメントを高めたい」

    - 今回、スーパー エー マーケットでの展開をしていただけるということを非常にありがたいと思っています。世界のA級品を集めたスーパーマーケットというコンセプトには共鳴する部分も多いですし、そこで展開される一部になれることは素直な喜びです。前述の通り、私自身も店頭で販売員をしていたことがあり、サヴィル・ロウでの修行時代も経ているため、生のコミュニケーションが介在する場所があることはとても大事だと捉えています。やはり実際に手に取ってくださるお客さまの声は貴重なので。すでに成熟したコミュニティのある店舗でどのような反応をしていただけるのかが楽しみですね。各々がアレンジしたコーディネート、素材やデザインに対して驚きや感動を与えることができたのかなどを聞くのが待ち遠しい限りです。
    世界的なセレブからの引き合いもあるのですが、マスマーケティングで一気に知名度を広げようとは思っていません。手作業で作っていることもあり、まずは工場と共に成長していくことが大切。上辺ではなくコンセプトやバックボーンに共感してもらい、末永い関係性を築き上げていけるようになりたいと考えています。数や量ではなく、深度や熱量でエンゲージメントを高めていけるよう、真摯なスタンスで臨みたいです。



    「物語と付加価値も共に身につけられる服」

    -〈SETCHU〉の服はロゴが大きく前面に出るようなキャッチーなアイテムは展開していません。アイデアや世界観にフィットしていただける方が増えて、「折衷」という概念を慈しんでくださるコミュニティが世界に広がって欲しいです。日本人の手で真のラグジュアリー・ライフスタイルを昇華させたブランドを作っていきたい。世代を超えて受け継がれていけるようなものづくりをしていますので、全てのアイテムには語れる物語が備わっています。多くの人とのセッションを経て出来上がったものでもあり、その付加価値も一緒に身にまとってもらえたらと
    〈SETCHU〉はタイムレスでありジェンダーレスであり、ボーダーレス。いつの時代でもモダンに見えるよう留意しています。これからも関わる皆さんに感謝を忘れずファミリーとして共に歩み、「折衷」していくことを続けていきたいですね。










    [展開店舗]
    SUPER A MARKET AOYAMA
    港区南青山3-18-9
    TEL : 03-3423-8428
    Mon. - Fri. 12:00 - 20:00
    Sun. & Sat. & Holiday 11:00 - 20:00




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