TOMORROWLAND

Side B - the essence of tomorrowland -


  • Special Interview
    About Lee WWII × TOMORROWLAND


  • 何をどう揃えて提案するのか。
    世界中から素晴らしいものを集めご紹介するにあたり、軸となるスタンスは最も大事な要素の1つです。
    妥協のない作り、付加価値を伴う接客、マーケットを読む審美眼。
    トゥモローランドが大事にしている要素を紐解いていきます。

  • TOMORROWLAND バイヤー
    川辺 圭一郎


    プレスを経て現職はトゥモローランド メンズバイヤーを担う。カルチャー方面にも知見があり、オンオフ問わずファッションとしての本質を捉えたバイイングが信条。 歌舞伎や古典落語にも精通した、渋谷生まれ渋谷育ちという生粋のシティーボーイ。
  • 株式会社エドウィン
    クリエイティブディレクター
    細川秀和


    1990年入社。
    ジーンズの何たるかを、服飾史や文化人類学的なアプローチも含めて多角的に捉える生き字引的存在。
    温故知新なマインドで新たな価値観を模索する手腕は常に注目の的になっている。


  • 世界3大ジーンズの1つに数えられる〈Lee〉との別注をリリースしたトゥモローランド。
    チョイスしたモデルは「大戦モデル」と呼ばれた通好みの逸品です。
    バイヤー川辺が今回のコラボレーションの深淵なるバックストーリーをインタビューしていきます。



  • 市場に流通した時期の短い希少なモデル


  • ―愛好家の間ではコアなファンが多い「大戦モデル」がベースに選ばれましたが、改めてこちらにはどんな歴史があるのでしょうか?

    細川さん(以下、細川。敬称略):現在、広くGジャンとして広く知られるデザインは戦前と戦後でハッキリと分かれています。このフラップ付きの両胸ポケットに代表される意匠は〈Lee〉がイノベーターですが、「大戦モデル」はちょうどデザイン面で過渡期の時代に位置します。軍服を公式ウェアとして卸していたこともあり、質実剛健な堅牢性で広く知られていた歴史も興味深いですね。第二次世界大戦当時にアメリカ政府が物資統制によって衣料品などに使用される素材やパーツの簡素化を国内企業に命じたことは有名ですが、その影響下にあったために全体的にシンプルとなりました。ミリタリー用品に使用されていた鉄製の月桂樹ドーナツボタンを汎用品として採用したり、尾錠の省略やワークウェアの象徴でもあるトリプルステッチをダブルステッチに変更したりと、この年代のモデルならではの特徴を有しています。

    ―〈Lee〉といえばカウボーイというイメージがあり、他メーカーよりもファッションとして完成度が高い印象もあります。

    細川:セットアップで着た時に馬上で映えるようデザインされているんです。例えば、後ろ身頃がやや短めに取られており、革パッチが上下でちょうどよく見られるように計算されていたりします。作業着としてのクオリティを担保しながらも、所作やスタイルがリスペクトされるカウボーイの人々が自己表現としても〈Lee〉を選択した由縁は、彼らが格好良く見えるのか否かも気にしていたからではないでしょうか。

    ―なるほど。実用性だけでなく、洗練されて見えるのはそういったストーリーもあった訳ですね。

    細川:パンツの顔ともいえるバックポケットのデザインは「ogive pocket(オジ ーヴ・ポケット)」と呼ばれる弾頭型の形状なのですが、左右に離れてセットされています。これも鞍に座る際に干渉しないようにと配慮された必然性があります。どんなにウエストサイズをアップしてもポケットのサイズは変わりません。体が大きくなっても中に入れる物は大きくならないから当たり前ですよね。そういった過不足のないディテールが今も引き継がれているのです。

  • ―シルエットに関しても無骨さだけでない独特の個性がありますね。

    細川:これも馬上でストレスを少なくするためにパターンを引いていることに起因しているかと思います。降りた時にもストレートなラインが出るので、スラックス的な印象に近いです。現代のスタイルにも馴染むシルエットではないでしょうか。

    ―歴史を感じさせながらも、ファッション的にタイムレスな普遍性を備えている事にシンパシーを感じます。近年はジーンズが店頭でも好評なのですが、市況やトゥモローランドに対する印象もお聞きしていいでしょうか?

    細川:仰るとおり、ジーンズには今日に続くストーリー性があるのも魅力です。年代によって変わるディテールはもちろん、世相を反映したブラッシュアップを繰り返してきましたから。西海岸ブランドのプレミアムジーンズの台頭や、リーマンショック後のアスレジャー・ファッションの台頭によるジーンズウェアの不振など、経済環境や人々のマインドの変化に影響を受けることもあります。また、音楽など各種カルチャーと密接に繋がっているアイテムの筆頭ということもあり、エンドユーザーの皆さまも知的好奇心を刺激されている部分があるのではないでしょうか。 トゥモローランドに関してはものづくりを重要視し、妥協しない探究心の強さが随一だという印象があります。上辺だけのテイストをなぞるのではなく、バックボーンも理解した上でモダナイズする手腕に長けているので、今回のような機会は大いに刺激を受けました。コロナ禍を経て、良いものを長く使いたい気持ちであったり、所有欲を満たしてくれるストーリー性を重要視するようになってきたのは我々にとっても好ましい傾向かと思います。

    ―カテゴライズすると出自はザ・アメリカというアイテムなのにも関わらず、幅広いスタイルにフィットする懐の深さがあるのがジーンズですが、〈Lee〉の持つファッション性の高さはトゥモローランドスタイルとのマッチングが素晴らしかったです。我々が提唱しているエレガンスともフィットし、守備範囲の広い逸品に仕上がりました。

    細川:今回のモデルに載せた素材に関しても驚きました。オーセンティックな「大戦モデル」をモディファイするだけでなく、カシミヤ混の生地をチョイスするとは。そのような我らにはない視点をお借りして、今後も意欲的なアイテムを共に生み出せていけたら幸いです。


  • Extra Chapter



  • プロダクトを完成させるのに、素材選びは大事なファクター。今回のエクスクルーシブモデルでは、カシミヤ混の極上生地を採用しています。開発を担っていただいたデザインワークスの福井さんにも話を伺いました


  • ―〈Lee〉といえば左綾が代名詞ともいえますが、名作である「大戦モデル」をベースにするにあたり右綾であるという点に注目しました。今回ご用意していただいた生地はどのような特徴があるのでしょうか?

    福井さん(以下、福井。敬称略):右綾は織り込まれる際に入る力の加減が左綾よりも強くしっかりと入るので生地が伸びにくいのが最大の特徴。またしっかりと織られているが故に、馴染んできても生地自体がフラットになりにくいですね。凹凸の強い状態が維持されるため表面のみ色落ちしていきます。左綾は〈Lee〉の代名詞的な存在で「線落ち」と呼ばれるきれいな色落ちが特徴ですが、このモデルが採用した右綾は「点落ち」というコントラストの効いたビンテージらしい退色が楽しめます。織物というのは基本的に縦・横の世界です。市場に流通する9割方の縦糸はコーマ糸なのですが、今回はクオリティ向上のためにスーピマコットンを採用しています。そして最大の肝はカシミヤを横糸に使っている点になるでしょう。

    ―デニムにカシミヤという時点で驚きがあるのですが、この組成は実際にどのような効果があるのでしょうか?

    福井:まずはその肌触りです。テクスチャーとしてウールが入るのでソフトなタッチになりますね。デニムの重厚な見た目に反してライトな着心地になるので、実際に着てみられると驚かれるかと思います。また、保温性が高まるという効果もあります。

  • ―となると、冬のデニムという形になるのでしょうか?

    福井:いえ、そこは天然素材ですので、寒い時期だけのものではありません。カシミヤ自体が軽く、熱を放出する特性もあるため通年でご使用いただけるかと思います。加えてケアも通常のデニム同様で構いません。色落ちなどの経年変化も含め、デイリーアイテムとしてお楽しみください。

    ―「大戦モデル」とカシミヤ素材というツイストが面白いアイテムになりましたね。

    福井さん:世界的な原価高騰により、このプライスでご提供できるのは奇跡です。歴史的なアーカイブをベースにしている点も踏まえると、非常に希少性の高い逸品に仕上がったのではないでしょうか。





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