BRIDAL Special Interview〈simmon〉
TOMORROWLANDの『BRIDAL RING ORDER』。
さまざまなゲストを迎え、魅力をお届けしていきます。
〈simmon〉のデザイナー、佐藤司紋さんを迎え、TOMORROWLAND アクセサリーバイヤーの和田麻里子との対談でオーダージュエリーの魅力を掘り下げます。
- simmon デザイナー
佐藤司紋
@simmon_official
1982年東京生まれ。 母親の影響で初めて彫金にふれた15歳の時、 自分の手で物を作る事に喜びを感じ その仕事を一生かけてしていくと直感した。ジュエリーメーカーで修行を重ねて独立し2012年より「simmon」をスタート。2014年に「simmon BRIDAL」、2015年よりハイエンドライン「Seta」をそれぞれスタート。
- TOMORROWLAND バイヤー
和田麻里子
@mariko.wd
TOMORROWLANDのアクセサリーバイヤーを担当。 パッと目を引く華やかなスタイリングに合わせるアクセサリー遣いも他の人には真似できない唯一無二のバランス感覚。凛としながらも華やかさと大人な遊び心がチャームポイント。
Interview
― ジュエリーデザイナーを目指すようになったきっかけを教えてください。
佐藤司紋(以下S):物作りが好きな母の影響で、15歳のときに一緒に彫金の工房に行ったことが最初のきっかけでしたね。工房を運営しているご夫婦に教えてもらいながら、バングルを作っているときに、ふとこの仕事をしていくんだろうなと直感的に感じました。
S:17歳の時に御徒町にある別の工房に通って、一人前として認められるまでカリキュラムに倣って課題をこなしていきました。そうして20歳のときに大手の加工会社から工房が受けている仕事を行うようになって、4年間ほど仕事していくうちに自分のやりたい方向性が徐々に見えてきたんですよね。そこで雑誌で見つけた海外のジュエリー学校に興味を持って、偶然的にそこに通う知人の紹介で学校見学ができるということで、24歳のときに2ヶ月間海外に滞在しました。当時は純粋に好きなものを作っていただけなので、ジュエリーの世界にファッションやアートがあるなんて知らなかったこともあって、結局見学に行ったコンテンポラリージュエリーの学校の先生にまだ君は早いと言われてしまって。そこからアントワープやイタリアなどヨーロッパの学校をひと通り見学して、一旦帰国してから真剣に一年間悩んだ結果、ファッションでやってみたいという気持ちが徐々に出てきて、日本のファッションブランドに入社し、コレクションの経験を積む中で、やっぱりこの世界が好きだなと確信しました。そして退社後に〈simmon〉を立ち上げました。バックグラウンドは職人から始まったからこそ、その技術を活かしながら自分の形を表現するブランドを立ち上げたいと思ったんですよね。
和田麻里子(以下W):〈simmon〉のコレクションを見たのは、2019年のニューヨークでした。セーフティーピンをモチーフにした天然石のピアスがとても素敵で、ぜひ展開したいと思って、帰国後すぐにご連絡しました。初めてコレクションを見せていただいた時とても衝撃を受けたのは、同じデザイナーが作ったとは思えないくらい意外性を感じたこと。もちろんブランドコンセプトが一貫していることも同時に感じたのですが、一般的にブランドが長くなっていくにつれて、次第にコンセプトに沿うように物作りをしていく傾向がある中で、〈simmon〉は今でも変わらず、どのジュエリーを見ても意外性を強く感じるブランドです。
S:ブランド立ち上げから、いろいろなものをつくりたいという考えはありましたね。基本的にコレクションラインでも量産前のサンプルは自分で作るようにしているので、ブランド初期は特に自分の得意とする技法を使いながらバリエーションのあるデザインを考えていきました。
W:今回ブライダルリングを展開するトゥモローランド 渋谷店に来店されるお客さまは、常に自分だけのものでありながら新しいものを探す方が多くて、その中でもブランドを知ってから購入する方と、知らなくても迷わず購入する方で分かれることが大半なのですが、〈simmon〉の場合は後者のお客様が圧倒的に多いのが印象的ですね。価値を分かって身につける方が多いことは、素敵だと思います。
― 今回展開するエンゲージリングのひとつ "MILLEGRAIN RING" について教えてください。
S:〈simmon〉のデザインコンセプトとして、古くからある表現方法をうまく現代へと取り入れて新しくかたちにしたいという考えがあります。 "MILLEGRAIN RING" も同じく、ミルグレインという球状の粒で石の周りを囲む古くからある表現方法を使っています。さらにダイヤを自然に見せるためにミル部分をプラチナで製作していますが、これも古いジュエリーでは良く見られる技法です。海外で見たアンティークジュエリーの魅力を取り入れながら、現代生活におけるつけ心地の良さや飽きがこないデザインを追求しました。
W:エンゲージリングでダイヤを使うとなると、ファッション寄りのブランドだと比較的ダイヤを小さく提案する方が多いんです。でも、その見せ方でも〈simmon〉はバリエーションを持っていて、ほかのデザイナーさんとは思考が違うようにいつも感じます。エンゲージリングでさえも、いい意味でいつも驚きをくださるデザインですよね。
S:ありがとうございます。
S:ジュエリーとまったく関係ない話なのですが、僕自身、小さい頃から様々なジャンルの音楽を好んで聴いています。小中学校のときにR&Bからスタートし、そのあとクラシック、そしてシティポップの現代版であるフューチャーファンクまでジャンルにとらわれることなく全く違う音楽に親しんでいるのですが、実はR&Bやフューチャーファンクは、昔からあった曲をもとにしたり、サンプリングして作っているんですよね。そのように古くから受け継がれているものに新たな要素を取り入れるスタイルは、自分のデザイン表現とも共通しているように感じます。
W:面白いですね。
― 同じく、今回展開するウエディングリングのひとつ "BAGATTE SIGNET RING" について教えてください。
S: "BAGATTE SIGNET RING" は、古くから親しまれているシグネットリングをもとにしています。発表当初はジュエリーラインのコレクションの一部として展開していました。昔のシグネットリングの使い方は、諸説では自らの証を残すためのハンコのような役割があったそうで、その古くからの意味合いを、現代では夫婦の証として残したいなと思い、ブライダルコレクションとして展開する事にしました。
W:サイズはもちろんのこと、シグネット部分の素材や仕上げを選べるのは、〈simmon〉独自のカスタマイズですよね。日常的にファッションとして身につけられるリングでありつつも、繊細なカスタマイズによってふたりだけの価値や美しさを引き出せるように感じます。男性からの反応も多い印象です。
S:デザインとしてはジェンダー関係なく考えていますね。夫婦でそれぞれ自分の気に入ったブランドを買う場合、男性の方に選んでいただくことも最近は増えてきました。
W:今後発表予定のブライダルリングはありますか?
S:僕自身は、いま展開しているコレクションで満足しているので、新しく増やす予定は特にないのですが、おっしゃっていただいた通り〈simmon〉独自のカスタマイズを活かして今後は更に一点ものとして提案していきたいと思います。例えばダイヤひとつ取っても透明なものだけではなく、インクルージョンが入ったミルキーやブラウン系などがあり、お客様それぞれのために仕立てる方法を増やしていきたいと思います。そのようにカスタマイズの方法をうまく広げながら、みなさんの記憶や思い出と共存し、長く寄り添える存在であり続けたいですね。