BRIDAL Special Interview〈SIRI SIRI〉
TOMORROWLANDの『BRIDAL RING ORDER』。
さまざまなゲストを迎え、魅力をお届けしていきます。
〈SIRI SIRI〉のデザイナー、岡本菜穂さんを迎え、TOMORROWLAND アクセサリーバイヤーの和田麻里子との対談でオーダージュエリーの魅力を掘り下げます。
- SIRI SIRI代表・デザイナー
岡本菜穂
@siri_siri_official
建築、インテリアデザインを学んだ経験を活かし、ガラスなど身のまわりにある素材を使ったジュエリーブランドSIRI SIRIを2006年からスタート。2015年第23回桑沢賞受賞。日常生活の中で見過ごされてしまいがちな素材を洗練されたジュエリーに昇華させる独特な世界を展開。
- TOMORROWLAND バイヤー
和田麻里子
@mariko.wd
TOMORROWLANDのアクセサリーバイヤーを担当。 パッと目を引く華やかなスタイリングに合わせるアクセサリー遣いも他の人には真似できない唯一無二のバランス感覚。凛としながらも華やかさと大人な遊び心がチャームポイント。
Interview
―おふたりが最初に出会ったのはいつ頃でしょうか?お会いしたときに和田さんが印象に残ったリングについて教えてください。
岡本菜穂(以下 O):〈SIRI SIRI〉の立ち上げとイコールですね(笑)。もともと空間デザインを学んだ後にインテリアの仕事をしていて、その後ジュエリーの制作を始めたこともあり、最初の発表は表参道・スパイラルで開催していたアートイベントでした。わたしがもともと金属アレルギーということもあり、切子の職人さんと制作したバングルなどを3〜4種類発表していて。そのときにトゥモローランドのプレスの方が〈SIRI SIRI〉を気に入って下さり、和田さんをご紹介いただいたのですが...
和田麻里子(以下W):プライスを聞いても決めてなかったんですよね(笑)。そこから一緒に電卓打ちながら値段設定していって。
O:そうなんです。だから、一緒にブランドを育てていただいたような感じです。渋谷店でお取り扱いが決まったときに、展開している他ブランドのジュエリーデザイナーの方々が〈SIRI SIRI〉を買ってくださってる光景も驚きでした。W:そこは、〈SIRI SIRI〉ならではの職人の技が光ってみえていたんだと思います。ちょうどお取り扱いを始めた15年前はまだジュエリーと言ったら海外ブランドが主流だった時代だったので、その中でコンセプト、デザイン、そして日本の職人さんとものづくりをしている姿は異質でしたね。マリッジを始めたきっかけはなんだったんですか?O:友人や〈SIRI SIRI〉の世界観が好きなお客様からの声があったからですね。独学でジュエリーを学んでいったこともあって、どうしようか迷っていたんですが、世にないものをつくるのはデザイナーとしての目標なので挑戦してみました。
― 今回展開する7種類のリングについて教えてください。
O:マリッジの展開を始めた頃は、"DIALOGUE", "ROUND", "ARCH", "SQUARE", "TRIANGLE"の5型で、今年"SEA", SKY"の2型が増えていきました。もともとインテリアや建築などの勉強していたこともあって、空間や奥行きをリングに落とし込む意識がありつつ、お客様からのお声も増えたことでバリエーションが徐々に増えました。その中でも、"DIALOGUE"は特別なリングです。
W:このシリーズのオーダー方法がすごく面白いんですよね。
O:まず、蔵前にある文具店のカキモリさんで作っていただいたオリジナルスケッチブックにパートナーそれぞれで丸をたくさん描いていただきます。
それで描いたノートとプラス、お互いのライフスタイルシートを一緒に〈SIRI SIRI〉に戻していただいて、こちらで丸をセレクトしていきます。シンプルな円にもその人の人となりが出るので、その中でも特にその人らしいものを選びます。その円の形をそれぞれ一方のパートナーの方のリングの形にします。円を交換するイメージです。スケッチブック中からどれを選んだかは基本的に明かさず、リングと一緒にノートをおふたりにお戻しして、ふたりのアルバムとして使っていただいています。
W:丸のサイズは自由に描いていいんですか?
O:そうですね。わたしがバランス見ながらサイズは調整するので、描いていただく丸はランダムで問題ないです。例えば、ライフスタイルシートに書いてある職業で公務員の方だったら、あんまりユニークすぎないほうがいいかなとか、逆にファッション関係の方だったら少し冒険した形を選ぼうかなというふうにその人の特徴を活かしつつ、つけ心地のいいものとしてデザインしていきます。
―〈SIRI SIRI〉のウェブサイトを拝見した時も、ブランドにまつわるインタビューや対談などが上がっていて、「対話」することを大切にされているのかなと感じました。
O:もともと立体的にデザインを考え、多面的にものごとを見ることもあって、〈SIRI SIRI〉を身につけたときに生まれる生活や社会的な意味をなにかで表したい気持ちがありました。それで、会社を立ち上げた2016年にようやくウェブサイト内で、制作の背景や込めているブランドのメッセージなどを表現していけるようになりました。
W:岡本さんは、常に目標に対してちゃんと潔く実行しますよね。それはリングへの表現の仕方にもあらわれているような気がします。
O:東京で暮らしているうちは、自分にアート思考もあるように思っていたんですけど、2018年にスイスの大学院に行ってから手でもの作りしている中で、やっぱり自分はデザイナーだなと感じましたね。わたしにとってアートとは、社会に対してなにか問題を提起したり、個人的な問題をもとに投げかけたりする役割があると思うんですけど、デザインは問題を解決することが役割だと思うんです。そうなると、これまで話した通り、友人やお客様からのリクエストがあれば、それを解決するものづくりが自分に合っているように客観的に感じられました。子供の頃から、アーティストではなくデザインの方かなとぼんやりは思っていたんですけど、改めてデザインの道で行こうと思えた体験でした。
―そしてデザインの力だけではなく、ブランド当初から日本の職人さんと一緒に制作していますよね。どのように出会っていったんですか?
O:ブランド初期は、シンプルにネットで調べて出てきた連絡先に直接問い合わせをしていました。あとは、そういう職人さんたちを紹介してくれる自治体や各技術ごとにある組合のデーターベースや窓口もあります。そこからオススメを受けたり。連絡してすぐに現場を訪ねて、直接ものづくりの現場を見に行くことが大切ですね。幸いにもブランド当初からすごく腕のいい職人さんたちに巡り合って、高いクオリティでものづくりができるので基本的に長くお付き合いしている職人さんが多いです。W:スイスに行ってから、東京では見れなかった景色をどう感じてます?O:東京にいると否応にもトレンドや社会の空気に左右されると思うんです。でも、スイスの場合、時間の流れがゆっくりで、街に情報が溢れていません。広告自体少ないので景観も美しく、よく公共空間がデザインされています。そういうゆったりしたリズムの中で、忘れかけていた自分の手でなにか作ってみたり感じることを改めて体感できたと思います。大学院内にある広い施設を使って、普段リングのデザイン工程では行わない粘土をこねるような彫刻的な造形づくりを授業後のライフワークとしてやってみたり。
W:一度、隔離中にスイスの景色の写真を送ってきてくれて、すごく自然が豊かだったことが印象的でした。
O:そうなんです。日本にいると自然って美しい反面、自然災害も多いので少し怖い存在だとも感じるのですが、スイスの自然は優しいんですよね。山も明るくて、日本よりも自然との距離が近い。東京にいるときは高層ビルの間に見える景色が好きだったけど、スイスに来てからこんなに毎日綺麗な自然と触れ合う生活を送るなんて想像もしてなかったです。
W:スイスと日本の2拠点生活に慣れてきたわけだけど、これからもマリッジリングは増えていく予定ですか?O:まだその予定はないですね。コンセプトに合って、お客様からのリクエストのタイミングも合えば増えていくかもしれません。基本的にはダイヤや素材を前面に出すというよりも、デザインや意匠によって新たな価値が生まれるようなリングをつくっていきたいです。