AVGVST DESIGNER INTERVIEW
現在、トゥモローランド 渋谷本店にてPOP UP STOREを開催しているジュエリーブランド〈AVGVST(オーガスト)〉。
今回は、デザイナーのNatalia Bryantseva氏にブランドの事や自身についての事をインタビュー。
また、Natalia氏がPOP UP STOREに在店した様子もお届けいたします。
- EVENT INFORMATION -
『AVGVST POP UP STORE』
10月15日(木)〜10月25日(日)
トゥモローランド 渋谷本店
instagram:@tomorrowland_shibuya
10月29日(木)〜11月8日(日)
トゥモローランド 京都BAL店
instagram:@tomorrowland_kyoto
Natalia Bryantseva
ブランドデザイナー
2019年にドイツ・ベルリンでジュエリーブランド〈AVGVST〉を設立。 多様な芸術表現から着想を得たユニークなデザインのジュエリーを提案している。
- ー ジュエリーのデザイン、ブランドを始めたきっかけを教えてください。
〈AVGVST〉は、ある意味では偶然のように始まりました。 2013年、私は広告代理店でクリエイティブディレクターとして働いていました。当時、企業にアイデアやコンセプトを提案し続けることに少し疲れを感じていて、自分の手で何かをつくってみたいと思うようになったんです。 好奇心からジュエリー制作を学んでみようと思い、デザインに関する本を買い集め、職場から50メートルほどのところにあった小さな工房を見つけました。そこで扉を叩き、「ジュエリーづくりを教えてほしい」とお願いしました。
最初は職人の方々も半信半疑でしたが、やがてYuliaという素晴らしいジュエラーが私を受け入れてくれました。それから約1年半、仕事が終わるとパソコンを閉じ、夜は工房の作業台に向かうという生活を続けました。
最初は自分や友人のためにジュエリーをつくっていただけで、ビジネスプランも、将来ブランドにしようという構想もありませんでした。ただ、自分の手でものをつくることが純粋に楽しかった。その趣味が少しずつ広がり、やがて〈AVGVST〉になっていきました。
- ー 以前のキャリアが現在の〈AVGVST〉に与えている影響を教えてください。
〈AVGVST〉を始める前は、広告代理店でクリエイティブディレクターとして働いていました。 そこでの経験を通して、写真や言葉、空間、そして細かなディテールのひとつひとつが組み合わさることで、ひとつのプロダクトを取り巻く世界観をつくることができると学びました。 また、それと同時に、見た目は美しくても、実際の商品そのものには根ざしていないコミュニケーションがあることにも気づきました。
広告では、商品そのものにはないイメージや感情まで、表現によってつくり出すことができます。でも〈AVGVST〉では、そうではなく、まずプロダクトそのものに魅力があり、写真や言葉はその魅力を伝えるためにあるべきだと考えています。 以前の仕事を通して、フォトグラファーやアーティスト、建築家、デザイナーと、単なる外部スタッフではなく、共にひとつの世界をつくる仲間として仕事をすることも学びました。 今でも私は、ジュエリーだけを単体で考えることはありません。ジュエリー、ボックス、店舗、写真、言葉。そのすべてに一貫した世界観があり、同じ方向を向いていることが大切だと思っています。
- ー 新しいシーズンのコレクションを生み出すインスピレーションは何から得ていますか?
インスピレーションは、多くの場合「観察」から始まります。 一枚のイメージ、本、アート作品、日常にある何気ないもの、あるいは一見まったく関係のなさそうなもの同士の間に、思いがけないつながりを見つけた瞬間です。
私は、一見別々に見えるものの中に、似た形や感覚、共通するリズムを見つけることを「韻(rhyme)」と呼んでいます。ばらばらに見えるもの同士が、ある共通点によってひとつの世界としてつながっていくような感覚です。この考え方は、私たちのデザインプロセスにおいて、とても大切なものになっています。
- 例えば、あるイヤリングのフォルムが、私の好きな振付家のひとりであるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの作品の中で、ダンサーが回転するときに広がるスカートのシルエットと重なることがあります。そうした、異なるものの間にある思いがけない共通点が、私の言う「韻」です。 チームの中では、5つの原則を指針にしています。「韻(rhyme)」「リズム(rhythm)」「コントラスト(contrast)」「バランス(balance)」「全体性(wholeness)」です。
そして、そのすべての根底にあるのが、ひとつのオブジェクトの中に、男性的な要素と女性的な要素の両方を共存させることです。私は、美しさは、その二つが出会う境界に生まれるのではないかと考えています。 最近、カール・グスタフ・ユングの『赤の書』を読み始めたのですが、その中のある考えが心に残りました。 世界は単純に男性と女性に分けられるのではなく、誰の中にも男性的な性質と女性的な性質の両方がある、という考えです。女性にも男性的な部分があり、男性にも女性的な部分がある。それぞれが自分の中にある両方の側面を受け入れることで、より完全な存在になっていくのだと思います。
私は、デザインにも同じことが言えると考えています。 例えば、柔らかく有機的なフォルムのそばに、硬質で工業的な要素を置く。そのように相反するものを組み合わせることで、デザインに緊張感が生まれ、オブジェクトがより生き生きと感じられるようになるのです。
- ー 新作コレクション "Asteroid Garden" について教えてください。
"Asteroid Garden" は、厳しい環境の中でも、自分にとって大切なものを育て続けるという考えを軸にしたコレクションです。 着想の出発点となったのは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』に登場する孤独な小惑星と、デレク・ジャーマンの「プロスペクト・コテージ」です。 プロスペクト・コテージは、海沿いの風が吹きさらす砂利の土地につくられた庭です。
- この二つに共通しているのは、どちらもとても小さく、個人的な世界でありながら、絶えず目を配り、根気強く手をかけることで、その世界が保たれていることです。 このコレクションは、ひとつのテーマを一度に見せるのではなく、いくつもの章を重ねるように展開しています。 道具、種、茎、シダ、ガーデンホース、さらにはホースにできた折れ曲がりまで。 本来は実用的なものを、その機能から切り離し、身体に沿う彫刻的なジュエリーへと変換しています。 「種」は、親になることや新しい始まりを象徴しています。「切られた茎」は、新しい成長のためには、ときに一度何かを手放したり、切り戻したりすることも必要なのだということを表しています。 私にとってこのコレクションは、たとえ周囲の状況が厳しく、何も育たないように見えるときでも、自分にとって大切なものを守り、育て続ける勇気についてのコレクションです。
- ー ハートモチーフのアイテムはブランドのアイコンの一つになっている印象ですが、デザインに対するエピソードや思いがあれば教えてください。
この縦に長いハートのフォルムは、中世のジュエリーや絵画の中で見つけたものです。 私たちのアーカイブには、大英博物館のコレクションで見つけた、15世紀のゴールドと赤いエナメルでつくられたハートもリファレンスのひとつとして残っています。 当時のハートは、私たちが一般的に思い浮かべるバレンタインのハートよりも、ずっと縦に長く、先端も鋭く尖っているものが多くありました。
- 私たちはその縦長のプロポーションを残しながら、よりシンプルなかたちへと削ぎ落とし、歴史的でありながら現代的にも感じられるデザインに仕上げました。 今では、〈AVGVST〉にとってある種の「紋章」のような存在になっています。 ロマンティックではありながら、分かりやすく甘かったり、感傷的だったりするものではありません。
- ー ジュエリーショップとタトゥーショップが併設されている直営店のデザインが斬新で素敵だと感じました。ぜひ紹介してください。
私たちにとって、タトゥーとジュエリーのつながりはとても自然なものです。 ジュエリーとは、自分の内側にある大切な感情や状態を残しておくものでもあり、人生のある瞬間を記録するものでもあり、また外の世界に何かを伝えるためのものでもあると考えています。 タトゥーも、まったく同じ役割を果たします。 だからこそ、あるコレクションのアイデアをそのまま延長するようなかたちで、タトゥーのデザインをつくることもあります。
- 〈AVGVST〉のすべての店舗は、パリを拠点とする建築・デザインスタジオ「Crosby Studios」と、その創設者であるHarry Nuriev氏とのコラボレーションによってつくられています。 店舗ごとにそれぞれ異なるデザインを採用していますが、中でもベルリンのフラッグシップは特別な存在です。 Harryが掲げる「Transformism」というコンセプトに基づき、店舗のためだけに新しい家具をつくるのではなく、本来はまったく異なる目的でつくられた既存のものを再利用することを試みました。 業務用の厨房機器はジュエリーのショーケースに、オフィス用のブラインドは壁面の装飾に。そして古いHPのモニターは、鏡へと生まれ変わりました。
- ー Nataliaさんにとってジュエリーはどんな存在でしょうか?
私にとってジュエリーとは、とても小さなものでありながら、驚くほど大きな感情を宿すことのできる存在です。 記憶を留めたり、誰かとの関係を刻んだり、人生のある瞬間に自分がどんな人間だったのかを、静かに思い出させてくれたりするものです。 私は、単なる装飾としてのジュエリーや、ステータスを示すためのジュエリーには、これまであまり興味を持ってきませんでした。
私が惹かれるのは、あるオブジェクトがその人の一部となり、その人自身の歴史を少しずつまとい始める瞬間です。 だから私たちは昔から、〈AVGVST〉のことを「ジュエリーを身につけない人のためのジュエリー」と表現してきました。
装飾そのものには少し懐疑的であっても、的確でどこか少し不思議なオブジェクトに心を奪われ、それを何年も身につけ続ける。 私たちは、そんな人のためにデザインしています。
- ー 今後の野望を教えてください。
〈AVGVST〉らしさを失うことなく、成長していきたいと思っています。 私が目指しているのは、ただ規模を大きくすることではありません。 世代を超えて長く存在し続け、そのブランドに関わる人たちにとって意味のある存在であり続けることです。 私たちのお客様の中には、10年以上〈AVGVST〉とともに歩んでくださっている方もいます。 いつかその方たちが娘のために初めてのイヤリングを選び、その娘たちが大人になったときには、今度はお母さんへの誕生日プレゼントを探しに戻ってきてくれる。そんなふうに、世代を超えてつながっていくブランドになれたらと思っています。
- ー ブランドのファンに向けたメッセージをお願いいたします。
〈AVGVST〉の中に、自分自身と通じる何かを見つけてくださって、本当にありがとうございます。 ブランドを始めた当初から、私にとってお客様は単なる「顧客」ではなく、「私たちの仲間」のような存在でした。 同じような視覚的な言語やユーモアの感覚、そして世界を見るためのある種の視点を共有している人たちだと感じています。
別の街や別の国で、誰かが〈AVGVST〉のジュエリーを身につけているのを見つけたとき、「きっとこの人とは何か話せることがある」とすぐに感じられること。それは私にとって、とても幸せな瞬間です。
皆さんがいてくださったからこそ、〈AVGVST〉は成長し、変化し、ときには少し変わった、決して商業的とは言えない選択をしながらも、自分たちのアイデンティティを失わずに歩んでくることができました。 これからも〈AVGVST〉が、誰もが自分らしくいられる、いわば「黄色い傘」のような場所であり続けられたらと思っています。
ー日本滞在中に楽しみにしていることや、訪れたい場所はありますか?
実は今回、日本には和食と寿司を学ぶ3週間のコースに参加するために来ています。 料理は私の大きな情熱のひとつです。昨年はロンドンのル・コルドン・ブルーで、フランス料理のコースも修了しました。
私は、自分が知らない街で「生徒」になること、あるいは見習いのような立場になることがとても好きなんです。 そうすることで、普段の生活リズムから完全に離れることができ、自分が日常の中で行っていることもまったく違った角度から見つめ直すことができます。 自由な時間は限られていますが、滞在中は東京の骨董市に足を運びたいと思っています。
DESIGNER IN STORE
at
TOMORROWLAND SHIBUYA FLAGSHIP STORE
デザイナーNatalia Bryantseva氏が
トゥモローランド 渋谷本店に在店。
POP UP STOREの様子とともにご紹介いたします。
ミニマルでありながら存在感を放つ、〈AVGVST〉の個性豊かなジュエリーがラインアップ。
デザイナーNataliaもジュエリーを身につけて在店し、一人ひとりに合わせたスタイリングを提案。






















