Bourrienne Paris X DESIGNER INTERVIEW
フランス・パリを拠点に、シャツという普遍的なアイテムに
新たな解釈を与えるブランド
〈Bourrienne Paris X(ブリエンヌ パリ ディス)〉。
デザイナーのCécile Faucheur女史と同創設者兼CEOのCarine Beigbeder女史に
直接インタビュー。(以下、セシル/カリーヌ)
ブランドの立ち上げからデザインの
インスピレーションに至るまで──
その背景にある思想とクリエーションのプロセスを
紐解きながら、時代を超えて受け継がれるエレガンスと、
現代におけるシャツの可能性を、
二人の言葉から探っていきます。
- EVENT INFORMATION -
『Bourrienne Paris X POP UP STORE』
4月29日(金)〜 5月10日(日)
ランド オブ トゥモロー 丸の内店
5月15日(金)〜 5月24日(日)
ランド オブ トゥモロー 心斎橋パルコ店
Cécile Faucheur / Charles Beigbeder
Bourrienne Paris X
同ブランドのコレクションデザインを務める Cécile Faucheur(セシル・フォシュール)女史と共同創設者兼CEOであるCarine Beigbeder(カリーヌ・ベグベデ)女史。18世紀、貴族の私邸として建てられた歴史的建造物「オテル・ドゥ・ブリエンヌ」の購入をきっかけに、シャツブランド
<Bourrienne Paris X(ブリエンヌ パリ ディス)>を設立。
- ーセシルさんがデザイナー、カリーヌさんがCEOとしてBourrienne Paris X(ブリエンヌ パリ ディス)を設立したわけですが、どのような経緯でブランド立ち上げに至ったのでしょうか?
カリーヌ:まずは、「オテル・ドゥ・ブリエンヌ」を購入したことが一番大きなきっかけになっています。「オテル・ドゥ・ブリエンヌ」は、フランス・パリに18世紀、貴族の私邸として建てられた歴史的建造物です。この邸宅の改装を進める過程からインスピレーションを得て、ブランドを立ち上げたいと考えるようになりました。 当時はまだ改装中だったのですが、この邸宅からインスピレーションを得たブランドを立ち上げたいと思ったのです。
そしてここに集っていた人々が纏っていたようなメンズウェアを現代に昇華したものをイメージしていました。それでデザイナーを探すため、服飾学校に求人広告を出しました。
セシル:それを見た私が応募したのが、私たちが出会った最初のきっかけです。いくつかの対話を重ねて、「chemise blanche(白いシャツ)」を選ぶことにしました。というのも、白いシャツは、あらゆる時代を通して受け継がれ、シルエット、襟やカフスなど、さまざまな面で非常に大きな変化を遂げてきた服だと思うから。逆に言えば、当時は白いシャツしかなかった時代です。だからこそ、このアイテムが持つ伝統的なディテールを現代的でモダン、ミニマルな形の中でよみがえらせてみようと考えました。
カリーヌ:ブリエンヌの方向性について、セシルと話していた時に「やっぱりシャツを作るべき。これは何世紀にもわたって受け継がれてきて、一度も廃れたことのない、まさに中心となるアイテムだから」と言ってくれたことをよく覚えています。白いシャツは、メンズのワードローブの中でも特別な存在で、長い歴史を持ち、最も多くの物語を宿しているアイテムだと思います。そう思えたのも、「白いシャツは女性にとってのリトルブラックドレスみたいなもの」とセシルが言ってくれたから。なので、最初はメンズウェアとしてスタートして、その後ウィメンズへと展開していきました。
- ー カリーヌさんは、「オテル・ドゥ・ブリエンヌ」からインスピレーションを得た時から、ファッションブランドを立ち上げることを考えていたのですか?
カリーヌ:そうです。フランスの伝統を蘇らせるプロジェクトとして、フランスの服飾史に目を向けました。出発点はメンズのワードローブの中から、過去のいくつかのアイテムを掘り起こすこと。その動機は、メンズファッションは非常にクラシックで少し物足りないというか、昔のディテールがほとんど失われてしまっていると感じたことにあります。ブリエンヌでは、その本来の品格を取り戻したいと思いました。
- ー ある意味、単一的な制限とも言える「白いシャツ」を展開することに、どのような可能性を感じましたか?
セシル:限られた選択のように見えて、実はたくさんの可能性がありました。カフスや襟、生地、シルエットなどさまざまなディテールを知れば知るほど、新たなアイデアが浮かんできます。
カリーヌ:つまり、その制約があるからこそ、たくさんのことができるとも言えます。枠は小さいけれど、その中でどれだけ多様性を生み出し、多くの提案や新しさを出していけるか挑戦し続けています。それに、ひとつの分野に絞ることで専門性が磨かれ、説得力としての強みが生まれます。ラックに白いシャツだけが並んでいることで、お客様に世界観を瞬時に感じ取っていただけるというか、そこからディテールひとつひとつにしっかりと目を向けていただけると思います。
- ー 白いシャツから始まり、10年間にわたって活動を続けることはそう簡単なことではないと思います。ここまで一貫した活動を支えたモチベーションはどのようなところにありますか?
カリーヌ:実際ブランドとして形にするまで、非常に時間もエネルギーもかかりました。最初はやっぱり大変です。それに少しずつ進めていくには、とてつもない忍耐力が必要。でも起業家は、必ずしも我慢強いタイプばかりではないので、そこが少し難しいポイントにもなりました。でも、そもそもブランドというものは何年も、もしかすると何十年、さらには世代を超えて築かれていくもの。残念ながら、あまりにも早く消えてしまうブランドが多いとも思います。
セシル : トレンドを追わない、流行に左右されないということを大事にしてきました。たとえば10年後でも、私たちのシャツは着ていただけるアイテムですし、時代遅れだと感じることはないでしょう。
特定のシルエットやプリント、あるブランドのようにワードローブ一式を揃えたスタイルは、いずれ流行遅れになってしまう。
つまり、「本物」を追求することでもあります。だからこそ、ブリエンヌは長く続くブランドになると信じられるのです。
カリーヌ:そうですね。そして、ブリエンヌを着る人々もまた、流行やトレンドに縛られないあり方を望んでいると思います。内面的な強さがあって、このシャツを着ることで「自分」を保てる。流行に決められた姿ではなく、自分らしくいられる存在でありたいと思います。
ー デザイン面では、どのようなことを具体的に念頭に置いて考えていますか?
セシル:白いシャツは、デザインとしてもクオリティとしてもタイムレスかつ、ミニマルなところが魅力です。昔のシャツからインスピレーションを得ているからと言って、衣装のように過剰な装飾にしたり、大きなロゴを入れるつもりはありません。独創的になりすぎる手前の絶妙なところで、デザインを留めておきたいというか。
ウェアラブルであることを前提にしつつ、ディティールで現代的に昇華する一方、トレンドに回収されない絶妙なバランスを大事にしています。それは、やはりお客様からのリアクションをいただくたびに改めて意識していますね。
- カリーヌ:昨日、あるお客様からメッセージをいただきました。彼女は自身の誕生日プレゼントとして、ブリエンヌのシャツを購入してくださって。思い切った買い物だったそうですが、ブリエンヌのシャツから自信とパワーをもらったと感動的なメッセージを送ってくれました。シャツを着ることで、自分らしさやなりたい自分への自信を高めることができ、日常のモチベーションも向上できる。お客様がそう思ってくれることが、私たちの一番の励みになるのです。
他にも、デンマーク人のお客様がお店にいらっしゃった際、ちょうど私も現場に居合わせたので、「オテル・ドゥ・ブリエンヌ」までご案内しました。彼は歴史にとても詳しい人で、建物が持つ歴史の意味をすべて理解していて、非常に感動してくださいました。そして彼はこう言いました。「まるでトラックに轢かれたような気分だ。鳥肌が止まらない」と。そうしたお客様が感じてくださったひとつひとつのことが、私たちの毎日の原動力になっています。
- ー これまでの10年を振り返っても、思い出すことはやはりお客様からのリアクションでしょうか?
セシル:そうですね。いまだにブリエンヌのシャツを着ている人を街中で見かけると、嬉しくなります。パリの地下鉄で一度、ブリエンヌのショッピングバッグを持った人を見かけたことがあって、本当に誇らしい気持ちになりました。「ああ、パリのような大都市で出会えるなんて信じられない」と思いました。でも、実際にこの10年経ったいま、こうして取材現場にさまざまなチームメンバーが集っていることも嬉しいのです。
カリーヌ:それに、10年というのはまだ始まりに過ぎません。これから100年以上、ブリエンヌは続いてほしいと本気で思っています。先程お伝えしたようにブランドを築くには、時間がかかる。長い道のりだと感じる場面があったとしても、これからさらに築きあげる気持ちでいます。
- ー 生産背景は、ルーマニアとポルトガルの2拠点に分けているそうですが、どのような役割がそれぞれにありますか?
セシル:ポルトガルの工場は、比較的小規模で家族経営のような雰囲気の場所です。そこではシンプルなピースをお願いしています。一方、ルーマニアの工場はもう少し規模が大きく、より技術的で専門性が高いため、複雑なデザインをお願いしています。シンプルなシャツの場合、1枚あたり約50分かかり、複雑なデザインになると3時間半〜4時間半かかります。
カリーヌ:ほかにも、フランスの非常に伝統的なアトリエにお願いすることもあります。例えば、ピンタックシャツのアコーディオンプリーツ部分は、ブルターニュで作られています。ほかにも、オテル・ドゥ・ブリエンヌのモチーフを頻繁に取り入れたギャロンは、フランス北部のリール近郊にある工房で作っています。そこは、代々継承する技術を持っています。シャツの仕立てから組み立て、最終仕上げまで出来るアトリエは、今やほとんどありませんが、世代を超えて受け継がれてきた職人技を備えた小さなアトリエは、今もなおわずかに残っており、そうしたアトリエの手仕事によってブリエンヌのシャツは完成します。
フランス国内でも、こうした極めて精密な技術を見つけるのは難しく、受け継がれてきた技術をこれからも守っていきたいと思います。
ー どのようなものにインスピレーションを感じますか?
セシル:絵画やアトリエといった世界からインスピレーションを得ることが多いです。素材やヒストリーが浮かんだら、まずはスケッチを描き始め、それからパターンメイカーと一緒にサンプル製作に取りかかります。
例えば、2025 FALL/WINTER コレクションでは、〈ニコラ・ド・スタール〉というフランスの画家から着想を得ました。ロシア出身で戦後フランスで1950年代に活躍した画家です。厚塗りの抽象画を特徴に、北方の風景をテーマにした一連の絵画を制作していました。そこで使われていた、青やグレー、クリーム色といった非常に冷たい色調がコレクションのカラーパレットとしても表れています。
- ー シャツそれぞれに名前がついていることも、ブリエンヌの特徴ですよね。どのように付けているのでしょうか?
セシル:どのシャツにも物語があるので、それを体現するのが名前です。たとえば、「彫刻家(sculpteur)」という名前は、アトリエで彫刻作品を制作している男性を想像してつけました。シャツの生地には、石膏のような少しテクスチャのあるものを選んでいます。そうやって、着る人の想像力をかき立てるような名前をつけています。
カリーヌ:ガゼットに入っている、ブランドロゴの刺繍は白地に白なので、非常に控えめな仕上がりになっています。それはある意味、私たちのDNAの一部ともなっています。
- ー さまざまなシャツが世の中にある中で、差別化としてデザインで意識されていることを教えてください。
セシル:手作業の温もりを感じられることを大事にしています。それから、プリーツ、レース、フリルなど立体的なデザインもブリエンヌらしさだと思います。白なので控えめだけれど、どこか力強さも感じる。ごくシンプルなシャツであっても、細部にこだわっていて。たとえば、袖に施した、非常に細かくてきめ細かなプリーツ。これがあることで立体感が生まれ、控えめな個性を表現しています。
ー 今回の別注アイテムについて、教えてください。
セシル:別注アイテムには「Songes(ソンジュ)」という名前をつけました。日本語訳はさまざまにある単語ですが、覚醒状態と夢の状態の中間のような状態を表す言葉としてつけました。これは、元々2026 SPRING/SUMMERコレクションでテーマの一部として使ったので、今回の別注アイテムはそこから派生して作りました。先ほどの「彫刻家」のように明確なストーリーがあるというより、このアイテムに関しては、よりお客様の想像力を刺激するものになるといいなと思っています。
カリーヌ:2026 SPRING/SUMMERコレクションのテーマ全体は、「ある夏の朝の夢」でした。夏の朝に目覚めた瞬間のことを着想源にしていて。個人的には、このシャツを着てそんな朝にコーヒーを飲みながら、夏の太陽を浴びたいなと思います。
- ー 白シャツに限らず、現在ではさまざまなカラーバリエーションも展開されています。色彩については、どのようなこだわりを持っていますか?
セシル:たとえば、青色のシャツには、特別なリネンを使っています。リネンの上に、樹脂とワックスを混ぜたものを塗布して層を作り、その層をこすり落とすことで、ヴィンテージのような仕上げにしました。これはイタリアの工場と協力して作ったものです。実は、この製作工程は非常に複雑なので、工場としては中止していたものでした。そこをお願いして、私たちのために作ってくださっている素材です。
- ー 今回、来日されて日本からどのような刺激を受けていますか?
セシル:日本は、センスや職人技、そしてファッションにおいて、まさに世界最高峰の国だと考えています。その日本で私たちのブランドを広く展開していただいていること自体が、ブランドのクオリティの高さを証明しているように感じています。
カリーヌ:そして、フランスと日本は非常に強い絆を持っていると思います。今までの両国の関わりを歴史から振り返るだけでも多くのインスピレーションを受けます。
セシル:街中で着こなしを見るだけでも、非常に刺激を受けます。特に男性がレディースのシャツを着ている様子を見るのがとても興味深い。日本のお客様は、ブリエンヌをユニセックスなスタイルとして見事に着こなしていると感じます。
カリーヌ:最後にひと言。ぜひパリの「オテル・ドゥ・ブリエンヌ」へお越しください。そうすれば、私たちのシャツに込められたすべての物語を、より深く感じていただけるはずです。 日本の皆様がパリにいらっしゃる際には、喜んで扉を開き、お迎えいたします。少し隠れた場所ではありますが、どうぞ遠慮なくお立ち寄りください。 きっと、ご自身が身にまとっているものの意味を、さらに深くご理解いただけることでしょう。



















