BRIDAL Special Interview〈ST,CAT〉
今回は〈ST,CAT〉のデザイナー 狩野明歩さんを迎え、TOMORROWLAND ジュエリーバイヤーの和田麻里子との対談でオーダージュエリーの魅力を掘り下げます。

- ST,CAT・デザイナー
@atelierstcat
狩野 明歩
ジュエリースクールで学び、2017年atelier ST,CATに入社。現在デザイナー兼クリエイティブディレクターを務める。個人ブランド「AKIHO MORI」やクレープ屋「tetote」を通じ、“すき”を形にする活動を続ける。
- TOMORROWLAND バイヤー
和田麻里子
@mariko.wd
TOMORROWLANDのジュエリーバイヤーを担当。 パッと目を引く華やかなスタイリングに合わせるアクセサリー遣いは唯一無二のバランス感覚。凛としながらも華やかさと大人な遊び心がチャームポイント。

Interview

ー 改めて、ブランドのコンセプトを教えてください。
狩野: 私たちが大切にしているのは、「結婚指輪らしさより、自分らしさ」という考え方です。
結婚・婚約指輪は特別なものであると同時に、毎日の暮らしのなかで身につけるものでもあります。だからこそ、普段好きで着ている洋服や手持ちのジュエリーに自然と馴染み、気負わず「毎日つけたい」と思える指輪をつくりたいと考えています。
デザインでは、手仕事から生まれるわずかなゆらぎや、有機的な曲線を大切にしています。一人ひとりの手の骨格に馴染むフォルムをもとに、素材の色味や質感、石の配置などを組み合わせ、その人らしい指輪を仕立てています。
お客様との対話を通して、ご自身やおふたりの「好き」を一緒に見つけ、かたちにしていく。そうして生まれた指輪が、日々の装いや暮らしの一部として、長く愛される存在になってほしいと思っています。
ー お客様との対話から生まれるリングは、一点一点アトリエ内の職人が制作し、接客を担当する職人もいると伺いました。職人を育てながら、つくり手がお客様と直接接する体制を築いてきた理由を教えてください。
狩野: ファッションジュエリーを始めた頃から、店内に彫金机を置いて制作をしながら、お客様がいらしたら接客する。そのスタイルが、私たちにとっては自然なものでした。
お客様と直接お話しすると、つくっているだけでは気づけないことがたくさんあります。どんな形に惹かれるのか、どんな着け心地を求めているのか。会話のなかで得られる小さなヒントを、すぐにものづくりに生かせることは、私たちの強みだと思っています。
また、自分がつくったものが誰に届き、どのように喜んでいただけたのかを知ることは、職人にとって大きなやりがいになります。その反応に触れる機会がないまま制作を続けるのは、ものづくりの喜びを十分に感じられず、もったいないことだと感じています。
だからこそ、職人を育てるうえでも、技術を身につけることと、お客様の思いに触れることの両方を大切にしています。経験の長さにかかわらず、一人ひとりが自分のつくるものに意味や責任、喜びを感じられるように、つくり手が直接お客様とお話しするスタイルを続けています。
お客様からいただいた言葉や、対話を通して得た気づきは、スタッフの間でも共有され、次の制作やご提案につながっていきます。その積み重ねによって、お客様とつくり手の思いが循環していると実感しています。
和田:ファッションジュエリーからブランドが始まったそうですが、ブライダルリングを専門に手がけようと決めたきっかけを教えてください。
狩野:ブライダルリングをつくり始めたきっかけは、代表の林が自身の結婚指輪を探した際に、本当に欲しいと思えるものが見つからなかった事でした。結婚指輪というイメージにとらわれず、もっと自分らしく選べる指輪があっても良いのではないかという思いから始まりました。
そこからブライダルリングを専門に手がける決断につながったのが、コロナ禍後の市場の変化です。手頃な価格で似たデザインの商品が増える中で、私たちはその競争を続けるよりも〈ST,CAT〉ならではのものづくりを深めていきたいと考えるようになりました。ファッションジュエリーで培った感性と、自社アトリエでお客様の細かな好みやニュアンスに応えられる製造体制。その強みを生かせる、以前から取り組んでいた結婚指輪に注力することを決め、2023年にブライダル専門ブランドへと転換しました。
和田:そこで培ったものづくりの考え方はブライダルリングにどのようにつながっていますか?
狩野:ファッションジュエリーでは、丸線を使い、ドローイングをするような感覚で有機的な形をつくっていました。一点物のものづくりが特徴だったんです。
その中で感じたのは、ほんの少しのカーブの角度や形の違いによって、好みも、指がきれいに見えると感じる形も、一人一人異なるということです。そうした感覚に寄り添えるブライダルリングがあったらいいなという思いが、今のデザインにつながっています。
─ お客様の反応を受けながら、〈ST,CAT〉らしいデザインが育まれてきたとも言えるのでしょうか?
狩野: 手仕事ならではのゆらぎをブライダルリングに取り入れることで、「まっすぐでシンプルな形なら、飽きずに長くつけられる」というイメージにとらわれず、ご自身にしっくりくる形を選んでいただけるようになりました。指の節などご自身が気にされている部分にも自然と馴染み、日常に寄り添う指輪として受け入れていただいていると感じます。
素材や仕上げの磨き方にも豊富な選択肢があるので、シンプルな形の中にも、さまざまな方の「自分らしさ」をかたちにできることが、私たちの特徴だと思っています。
ー 今回、トゥモローランドでは初めて〈ST,CAT〉を取り扱うことになります。どのような点に魅力を感じましたか?
和田: お話ししてくださったように、ファッションジュエリーからスタートした背景があるからこそ、ブライダルリングを専門にしながら、その枠にとらわれず、ファッションの要素を持ち続けていることが魅力のひとつだと思います。
デザインに加え、素材や仕上げ方を選び、自分だけのリングに出会えるところも独自の魅力です。私たちがこれまで取り扱ってきたブライダルリングとは、また違った表情を持っていると思います。一点一点、職人の手によって仕上げられるからこその、手に馴染む着け心地や繊細なテクスチャーにも惹かれました。そうした〈ST,CAT〉の世界観はショップの空間にも表れていますよね。
狩野: そうですね。ショップづくりで大切にしたのは、自然体で過ごせる心地よさと、特別な時間への高揚感です。婚約・結婚指輪を探す場所は、普段あまり訪れる機会がなく、敷居の高さを感じて緊張される方もいらっしゃいます。だからこそ、柔らかな空間や、職人が指輪をつくる風景を身近に感じることで、少しずつ緊張がほぐれ、ご自身の「好き」に素直になれる場所にしたいと考えました。
2店舗とも設計をお願いしたMILESTONEさんは、飲食店の空間を数多く手がけていらっしゃいます。長い時間を過ごしても居心地がよいことを大切にしてくださいました。カウンセリング中のお客様とスタッフの距離や、お客様同士の距離にも配慮し、じっくり指輪を選べる空間になっています。同時に、指輪を選ぶ時間そのものも、おふたりの特別な思い出になってほしいと思っています。什器やテーブル、椅子など、ふと目を向けた先にも心が高鳴るようなものを取り入れ、そこで過ごす時間まで大切にできる空間を意識しました。
本店では、ものづくりにおける手仕事の温かみや、有機的な曲線を空間にも反映しています。左官の壁の質感や、曲面の柔らかさにこだわり、どの席からもアトリエの制作風景を感じられるつくりにしていただきました。
今年6月にオープンした婚約指輪専門店「-u- atelier ST. CAT」では、「宇宙・洞窟」をテーマにしています。男性がおひとりでいらしたときにも、少年の頃のような好奇心やワクワクする気持ちを思い出し、まっすぐにパートナーのことを考えながら指輪を選べる場所にしたい、という思いを込めました。有機的なアーチと、手作業で表情を加えた鉄の質感が重なり、奥の丸窓からは職人の手仕事を感じられる空間になっています。それぞれ異なる表情を持つ2店舗ですが、気負わず自分らしく指輪を選べること、そして、その時間が大切な記憶として残ることを、共通して大切にしています。
和田:オーダー時に選べるオプションの豊富さも魅力のひとつですよね。さまざまな選択をできるようにしているのは、どのような思いからでしょうか?
狩野: 出来上がったものの中から好きなものを選ぶことにも、楽しさや安心感があると思います。そのうえで、私たちはジュエリーを提案するブランドであると同時に、婚約・結婚指輪をつくるアトリエでもあります。
ある人が好きだと感じる組み合わせと、別の人が心地よいと感じる組み合わせが違うのは、ごく自然なことですよね。だからこそ、ブランドとして大切にしているデザインや感覚をご提案しながら、お客様それぞれの「好き」を重ね、アトリエとしてかたちにしていきたいと考えています。
デザインはもちろん、素材の色味や磨き方などほんの少しの違いでも、身につけたときの印象やしっくりくる感覚は変わります。さまざまなオプションを用意しているのは、一人ひとりの感覚に応えたいからです。お客様と一緒に「自分らしさ」を見つけ、それをかたちにできる場所でありたい。その思いが、選択肢の豊富さにつながっています。
和田:選択肢を広げるなかで、〈ST, CAT〉らしさをどのように保っていますか?
狩野:私たちのスタッフは、それぞれ好きな洋服の系統も、ものを見る感覚も違います。それでも、〈ST,CAT〉の世界観に共感して集まってくれています。
「自分らしさ」を大切にするブランドだからこそ、私たち自身も「ST,CATらしさとは何か」を考え、意見を伝え合う時間を設けています。感覚的に使っている「らしさ」という言葉を、一人ひとりが自分の言葉で表し、共有することを大切にしています。
デザインのベースにあるのは、ファッションジュエリーの頃から培ってきた、身体の曲線のような有機的なフォルムや手仕事から生まれるゆらぎです。その共通の軸に、スタッフそれぞれの感性が重なることで、〈ST,CAT〉らしさの幅も広がっていると感じます。スタッフが増える中で気づいたのは、一人ひとりの「らしさ」をブランドの中で生かしていくことも、〈ST,CAT〉らしさなのではないか、ということです。大切にしてきたものづくりの軸を共有しながら、みんなでブランドの表現を育てていきたいと思っています。
和田: 新しいオプションは、どのように生まれるのでしょうか?
狩野:お客様との会話から得た気づきが、制作につながることはよくあります。それは職人に限らず、接客を担当するスタッフそれぞれが、心に残った言葉や気になったことを持ち寄るところから始まります。また、職人が「この工具をこんなふうに使ったら、どうなるんだろう」と試す中で、新しい表情が生まれることもあります。「こんな質感を出してみたい」「この工具の使い方を変えたら面白そう」「お客様が話していた感覚をかたちにしてみたい」。そうした好奇心を出発点に、試作を重ねながら、新しいオプションが生まれていく事が多いです。お客様の言葉とスタッフそれぞれの感性や技術が出会うことで、私たちだけでは思いつかなかった表現にもつながっています。
和田:ラボグロウンダイヤモンドを選択肢のひとつとして提案している理由を教えてください。トゥモローランドではこれまで取り扱いがなかったので、提案に至った背景や、その魅力について伺えればと思います。
狩野: ラボグロウンダイヤモンドを提案しているのは、婚約指輪をもっと身近に、日常のなかで楽しんでいただきたいからです。特別だからこそ大切にしまっておくのではなく、普段の装いに合わせて、気負わず身につける。その可能性を広げる選択肢だと考えています。
自然が育んだ天然ダイヤモンドの背景や歴史も、研究や技術の進歩から生まれたラボグロウンダイヤモンドの魅力も、丁寧に伝えていきたいと思っています。どちらも価値のある選択肢として、お客様ご自身の価値観や暮らしに合うものを、自由に選んでいただくことを大切にしています。
ー 和田さんが初めてリングをご覧になったとき、特に印象に残ったものを教えてください。
和田: "Nude" ですね。ファッションリングとブライダルリング、両方の魅力を兼ね備えていて、まさに〈ST,CAT〉らしいリングだと思いました。着け心地もとても良く、同じデザインでも幅が変わると、存在感や表情が違って見えます。素材や仕上げ、オプションを選んでいく事で、自分だけのマリッジリングになるところも素敵ですよね。
狩野: 実は "Nude" は、私たちが初めて手がけたマリッジリングで、ブランドの原点となるシリーズなんです。裸婦の絵画を思わせる有機的な曲線や、緩やかなライン、厚みの変化によって、お互いの個性を尊重しながら寄り添うふたりを表現しています。
和田さんがおっしゃったように、幅や磨き方、光の当たり方によっても表情が変わります。シンプルな中に丸みと立体感があるので、その曲線のつながりを損なわないように心がけています。
和田: "Contour Engage" も印象に残っています。クラシックな立て爪のリングをあえてカジュアルにデザインしていて、存在感がありますね。ラボグロウンダイヤモンドを選べる事も、トゥモローランドではこれまで取り扱いがなかったので興味深く感じました。デザインも選択肢も、今の時代に合っていると思います。
狩野: "Contour Engage" は、Bodyシリーズの「手の形の延長線」という考え方を受け継いだ婚約指輪です。ダイヤモンドのフラットな面に対して、覆輪や爪、腕には柔らかな丸みを持たせています。その対比が、和田さんの感じてくださったカジュアルさや、親しみやすい表情につながっているのだと思います。
制作では、石座と腕の位置関係や、左右の丸み、角度を丁寧に整えて、全体のバランスを大切にしています。単体でも重ね着けでも、日常に自然と馴染むデザインです。
和田: 今回は、この二つに加えて "Impressionism" も登場しますね。
狩野: はい。 "Impressionism" は、熱によって生まれる自然なねじれを、リングの形に落とし込んだシリーズです。重なり合う曲線で、ふたりの人生が交わる姿を表現しています。制作では、その自然な流れや陰影を残すことを大切にしています。日々の小さな傷も味わいになり、時間とともに表情が深まっていくので、歳を重ねるほど手に馴染んでいくリングだと思います。
ひとつのシリーズに人気が集中するというよりも、曲線のあるデザインが全体的に選ばれています。なかでも "Nude" "Body" "Impressionism" は、私たちを象徴するシリーズですね。それぞれ曲線の表情やゆらぎの加減が違うので、ご自身の手に馴染む感覚や、心地よいと感じるバランスを大切に選んでくださる方が多いです。
トゥモローランド 渋谷本店では
10月29日(木)から11月8日(日)までの期間中、『BRIDAL RING ORDER』を開催いたします。
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>>>TOMORROWLAND BRIDAL 特設サイト
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