LAND OF TOMORROW

STAFF COLUMN 〈Shirt〉


  • ランド オブ トゥモローのスタッフが
    独自の視点で
    綴る連載企画〈STAFF COLUMN〉。
    今回のテーマは"シャツ"。
    普遍的でありながら、
    ワードローブに欠かせない、
    着る人の個性を静かに引き立てるアイテム。
    その本質的な魅力をスタッフのエピソードとともに紐解いて行きます。




  • STAFF : KAWASAKI


  • シャツというお題を戴いた時に
    たくさんあり過ぎてどんな切り口のお話しをしようかと、
    とても悩みました。ディテールの話?
    それは、自分じゃなくても
    ネットや書籍で分かるしなぁとか、
    有名なシャツブランドの話しなども
    ネットには色々出ていますので悩んだ結果、
    〈Le Prince Jardinier(ル・プランス・ジャルディニエ)〉の
    お話しをいたします。

    このブランドは、
    シャツ専門のメーカーでもブランドでもありません。
    ルイ・アルベール・ド・ブロイ公爵が手がける
    高品質のガーデニング用品と
    衣服のブランドなのです。
    ご存知の方もおられるかと思いますが、
    日本には素敵なジョウロや
    バケツなどが入っていましたが、
    ウェアを扱うお店はあまり無かったようです。

    最初に出会ったのは、
    パリにあるデロールという
    剥製や標本の専門店で、
    顧客にエルメスや
    ポール・スミスを持つ老舗なんです。



  • 私は剥製や標本が好きで、
    理科室や博物館に展示されている
    標本や資料の美しさに、
    学術と芸術が混ざり合う
    ムードに好奇心を揺さぶられていました。
    幼少期の私はお洋服に目覚める以前は
    動物や昆虫に夢中で、
    外で遊べない日は
    親に与えられた図鑑を一日中眺めては
    画用紙に昆虫や動物の絵を描いて過ごしていました。
    休日には動物園や水族館に
    連れて行ってもらっていたものです。
    特に水族館や博物館の薄暗い雰囲気が好きで、
    何か非現実的な空間にワクワクしていました。
    なので、ヨーロッパの旅に出かけた際に
    パリのカタコンブや医学大の標本室を
    訪れたりもしていました……ちょっと引きますよね。

    そしてどうしても行きたかった、
    パリにある剥製や
    標本の専門店デロールを訪れた際に
    〈ル・プランス・ジャルディニエ〉に出会いました。
    二階建てで控えめな間口を入ると、
    店内の一階がプランス・ジャルディニエの売場。
    ひとしきり剥製や標本を見た後、
    一階のフロアでプルオーバーの
    スタンドカラーシャツが目に止まりました。
    ハーフプラケットの前立ての直ぐ下に
    コパーに光る金属プレートが設えて
    あるその姿がとても素敵で、
    しかも植物の種を入れる
    小さなポケットまで両脇に付いているのです。




  • 当時はアルチザン系と言われる
    洋服が大好きで、
    ポール・ハーデンのマックコートの中に
    着たいなぁと思い購入しました。
    私は釣りを嗜みますので
    釣りの際にも良く着用するのですが、
    流石に作業着として作られた
    シャツですから丈夫で、
    洗っても直ぐに乾きます。
    ずいぶん長く着用していますが、
    ほとんど傷んでないのです。
    洗い替えが欲しいのですが、
    日本では入手出来ないので
    またいつかパリを訪れる機会があったら
    買い足そうと思っています。




  • 同じくハイソサイティーな人物が
    白いシャツしか扱わない
    ブランドを立ち上げています。それは、
    〈Bourrienne Paris X(ブリエンヌ・パリ・ディス)〉
    という10区に建つ建造物に
    店を構えるブランドです。

    創業者であるシャルル・ベグベデ氏は
    投資家であり実業家の顔を持ち、
    カペー朝を築いた
    フランス王「ユーグ・カペー」の子孫であり、
    名だたる名家と親戚という一族の出身です。
    弟はベストセラー作家で、
    フレデリック・ベグベデ氏。



  • 彼の華やかな背景から
    生まれるシャツのデザインは、
    中世の男性が
    甲冑のインナーとして着用していた
    白シャツがベースになっていて、
    ブザムのピンタックや
    肩山や袖の剣ボロにギャザーの
    装飾が施されていて、
    その片鱗が見受けられます。
    今では、この職人も減少傾向にあるそうで、
    日本の民藝などと近い
    装飾の文化遺産だと
    個人的には感じています。
    この職人技術を駆使した
    プロダクトがいつまでも
    後世に受け継がれる事を切に願います。

    ブリエンヌのシャツには、
    一つひとつに名前が付けられていて、
    その名前はカフスの裏に
    刺繍で書かれています。
    なんとも可愛らしく、
    彼等のプロダクトに対する
    愛情が感じとれます。
    これから薄着になる季節、
    オシャレしたいけど
    暑くて何を着ようか迷った時にも
    サッと着て一枚で絵になるシャツ。
    それがブリエンヌです。


  • Bourrienne Paris X NUMERO II ¥72,600- (tax in)





  • STAFF / BUYER : YAMANOBE



  • シャツの事を考えていたら、
    気づくと頭の中が脱線している。
    といいますか、私は、いつも何かのことを
    考えはじめると、
    記憶があちらこちらと
    遊びはじめてしまいます。
    たとえば、誰かの笑った顔のこと。
    しわしわに、くしゃくしゃに
    崩れる瞬間を思い出して、
    なぜだかこちらまで、
    ゆるんでしまうあの感じ。

    私は昔から、
    人のそういう“こぼれてしまう部分”を
    見るのが好き。
    整えようとしても整いきらない、
    愛嬌や仕草の癖みたいなもの。
    笑うと、顔は正直になる。
    取り繕うことを忘れて、
    しわも、くしゃくしゃも、
    その人の人生ごと、
    ふっと表に出てくる。
    整った顔よりも、
    少し崩れた表情のほうが、
    ずっと美しいと思ってしまう。
    そこには、隠していたはずのやわらかさや、
    これまで過ごしてきた時間の温度が、にじむから。

    そして、ふと戻ってくる。
    シャツのことに。
    たぶん、シャツも似ている。

    パリッとした新品のシャツもいいけれど、
    何度も洗って、
    少し頼りなくなった生地のほうが、
    なぜか心に近い。
    洗いざらしのまま、
    しわを気にせずに袖を通すと、
    その日の自分を
    そのまま受け入れてくれるような気がする。
    きちんとしすぎない。
    でも、だらしなくもない。
    わたしには手放せない、
    ブラウンのリネンのシャツがあります。



  • もう十年以上着続けている、
    マカフィーのシャツ。
    トゥモローランドに入社して、
    初めて買ったシャツです。
    手放す理由はいくらでもあるのに、
    なぜか、ずっと手元に残っている。
    それは、たぶん愛らしいからだと思います。
    完璧だった頃の面影はもうない。
    でもその代わりに、少し頼りなくて、
    少し不格好で、
    でも妙にしっくりくる存在になっている。
    最初はもう少しだけ、
    よそ行きの顔をしていたはずなのに、
    今はすっかり、こちらの生活に染まっている。
    よく見ると、そのシワには
    理由があるんだと思いました。
    袖のシワも、襟のくたびれも、
    自分の癖が染み付いたよう。
    まるで長く付き合った友人のように、
    説明しなくても
    分かり合っている感覚があります。

    きれいだから好き、
    ではなくて、一緒に時間を過ごしてきたから、
    手放せない。
    そういうものって、きっと誰にでもひとつくらいある。
    無意識に繰り返してきた動きや、
    そのときどきの気分みたいなものが、
    少しずつ布に移っている。
    まるで、人の表情みたいになっていると感じます。
    今は、陶芸をする時に
    このブラウンのシャツをよく着ています。
    陶芸をする時間というのは、
    自分の奥深くにある意識を集中、
    いや、集合させる。だから装いはできるだけ、
    自分の身体に近い感覚のものが
    ノイズがなく、良いのだ。
    つまり、十年の相棒はもってこいだ。




  • 陶芸のとき、
    土に触れる手の動きも同じで、
    その日の気分や力加減が、
    そのまま形に現れる。
    整えようとしても、
    どこかに残ってしまうその人らしさ。
    回るろくろの上で、
    形はいつも少しだけ予想を裏切る。
    でも、その曖昧さもいい。

    シャツも同じで、少しシワがあって、
    少しだけ身体になじんで、
    完全ではない状態で寄り添ってくる。
    シャツのシワって、
    ただの乱れじゃない。
    それは、その人の時間の記録だと思う。
    整えようとしても、
    どこかに残ってしまうその人らしさ。
    笑った表情も、シャツのシワも、
    むしろ、そこにしかない魅力。
    だから、このシャツが好きなんだと思う。





  • そんな、シャツ好きのわたしが偏愛している
    〈Bourrienne Paris X(ブリエンヌ・パリ・ディス)〉。
    2017年にフランス・パリで生まれた
    “シャツだけ”を作り続けるブランドで、
    歴史的な邸宅“オテル・ド・ブリエンヌ”を起点に、
    過去のディテールのエッセンスを
    現代に蘇らせていて、
    基本的には白シャツを
    中心にものづくりがなされている。

    本来なら、ドレスシャツやユニフォームのように、
    背筋をすっと正される緊張を
    まとっているはずと思ったが、
    袖を通すと、ブリエンヌのシャツはどこか違う。
    コットンポプリン素材特有の、
    少しだけ空気を張りつめたような
    凛とした質感や、
    コットンローン素材の軽やかさがあったり、
    今年はライトリネン素材も
    ラインナップに加わっていた。

    どれも仕立てはあくまで端正で、
    襟もカフスも、美しく整えられている。
    なのに、その完璧さが、
    こちらを縛ることはない。
    まるで、笑ったときに崩れる顔のように、
    整っているのに、緩んでいる。
    ブリエンヌのシャツは、
    だいたい月曜日に着ていることが多い。
    仕事始めの月曜日は、
    少しだけ装いから背中を押してもらう日。
    だけれど、緊張感を纏うことは違くて、
    あくまでも自分を整えるという意味で。





  • あ、そうそう。
    カフスには、ひとつひとつ名前がついている。
    ただのパーツではなくて、
    まるで小さな人格を持っているみたいに。
    そのささやかな遊び心が、
    ほんの少しだけ緊張をほどいてくれる。
    きちんとしているのに、
    どこかチャーミング。

    それはきっと、人を観察しているときに感じる感覚と、
    どこか似ている。だから惹かれるのだと思うし、
    これからも着続けたいシャツ。
    そしてふと、思い出す。
    十年以上着続けている、
    ブラウンのリネンのシャツのこと。
    あの、少し頼りなくなった
    生地のやわらかさや、
    身体に沿って刻まれたシワのかたち。
    新しさではなく、
    時間を重ねたことで生まれる美しさ。

    今年のイチオシは、
    ライトリネン素材のこちら。
    リネン素材特有の、
    着続けた嗜みの記憶を、
    またこのブリエンヌのシャツでも楽しみたいな。



  • Bourrienne Paris X BOUDOIR ¥96,800 (tax in)


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