TOMORROWLAND

Side B - the essence of tomorrowland -


  • Special Interview
    H. Osaku × TOMORROWLAND


  • 紳士の本質的なワードローブとしてのスラックスをリビルドすべく、TOMORROWLANDが新たな定番を目指したニューラインが誕生しました。
    ビスポークの世界で名を馳せる尾作隼人さんと、パンツファクトリーとして高名なエミネントスラックス社が協業することで生まれる新機軸の魅力を探ります。

  • TOMORROWLAND 企画デザイナー
    森田 輝


    トゥモローランド メンズ企画。この道一筋で業界内外に知られるキーパーソン。意欲的に数多くのアイテムを世に送り出してきた生き字引的存在。


  • パンツ職人
    尾作隼人


    1978年生まれ。老舗テイラーでキャリアをスタート後は2007年にパンツ専業の職人として独立。日本屈指の技術を持つパンタロナイオ(=パンツ職人)として知られる。その審美眼と確かな技術で国内外に数多の顧客を抱えている。


  • スラックスの本質的な要素を⾒直す


  • ―新定番となるような、トゥモローランドらしいエレガンスを体現したスラックスを作ろうと起案した時に、尾作さんとエミネントさんがタッグを組まれていた〈Eminent OSAKU〉ラインが思い浮かびました。
    今回のプロジェクトはその邂逅がきっかけです。

    尾作さん(以下、尾作。敬称略):お話をいただいた時は嬉しかったです。
    世の中もイージーパンツに代表されるコンフォートなものに振れてきたタイミングだなという感覚もありましたので、ドレス衣料を真摯に表現してきたトゥモローランドさんとのコラボレーションは刺激がありそうだなと。

    ―すでにエミネントさんと取り組まれているベースがあったので、我々としては生地のチョイスやディレクションの気分だったりを落とし込む形で関わらせてもらう方向性になりましたね。
    尾作さんから見たトゥモローランドの印象はどのようなものでしたか?

    尾作:世間一般的にはドレッシーでコンサバな感じなのかと思いますが、私が見る限りは非常に尖っているイメージです(笑)。
    素材選びや色のチョイス、細部の作りなどが突き詰められているのに、それを喧伝することなく涼しい顔をしているのも大人だなぁと。
    ―そこに気づいていただけているのは嬉しいですね。
    一見すると分からない部分でインディペンデントなことを取り入れていることは多く、工場さんにはよく無理をお願いしています…。

    尾作:モノづくりをしている方々には響きますよね。
    必然性が先にあるからこそ機能美になる。私がビスポークでパンツを作り上げる時にも留意している要素です。
    今回の試みは新たな出会いに大きな期待をしているんです。
    日頃は顧客さまと1対1で向き合い、その方のための1本を生み出すことが主ですから。
    より多くの方に届くことで裾野が広がり、良いインプットとアウトプットの循環が成されるのが楽しみです。

  • 型紙から立体物になる間のセンス


  • ―先行で展開しているテーパード型のモデルは、すでに目の肥えた顧客の方々を中心に人気を博しています。
    大きなプロモーション活動をした訳ではないのですが、店頭でご案内すると納得感を持ってご購入いただいていますね。
    試着をされると、そのフィット感や醸し出される本物ならではの存在感が際立っているというお声が多数です。

    尾作:アウトプリーツの幅にはこだわっています。
    前面から見た時にきれいな四角形を構成するのが大事でして、この黄金律を守るとプリーツのラインが裾までスっと美しく落ちるんです。深めの股上で腰やヒップが吸い付くようなパターンを引いていますが、窮屈に感じることがないよう運動量を確保しています。

    ―尻ぐりが大きめなので、ウエスト位置をしっかりと腰骨を越えた部分で収めるフィッティングにすると格好いいですね。

    尾作:股上が深いとハイウエストで着ることができますので、そうすると全身の中で下半身(=パンツ)の占める割合が多くなり脚長に見えるんです。
    人間の構造上、後ろから前に向けての可動域の方が多いので、型紙の段階で運動量を確保するようにしています。
    例えば歩いたり階段を登ったりする際には後ろ側が張りますし、立ったり座ったりといった日常的な動きの中でのストレスは極力スポイルできるようにしています。

    ―そこは生地特性のみで補完するのではなくパターンでアジャストしていると。

    尾作:そうです。
    型紙という平面の設計図から立体物にするまでの工程では、関わる人の完成形イメージを合致させる必要があります。
    MTMでない以上、工場さんの得手不得手もありますし、長年培ってきた癖なども勘案しないといけないですね。
    やはり数値化・図面化できない箇所はセンスだったりコミュニケーションだったりが重要になってくると捉えています。

    ―ビスポークで多くの方から傾聴されてきた経験則がそこで生きてくる訳ですね。
    よくオーダーは初回で望み通りのものになるのではなく、そこから職人さんとの関係性が始まると言われる部分に通じます。
    尾作さんの希望を具現化するエミネント社さんの実力も折り紙つきということですね。

    尾作:私の型紙をベースに依頼した初期の頃は工場の職人さんから「通常ではあまり扱わない仕様や工程があり手間がかかる」というような話があったのですが、仕上げ工程の方からは「めちゃくちゃやりやすい。
    穿いた際の着用感と美しさが素晴らしい」との声も。
    従来の効率化された作り方とは別のベクトルではありますが、本質的にパンツを仕立てるという意味では理に適っていたのだと分かって嬉しかったですね。

    ―先ほどの運動量確保のパターンやスタイリングにおけるシルエットなどもそうですが、人が着て動いて完成するという当たり前のゴールに向けて合理的な作業をされているのが分かりました。

    尾作:やはり先ほども申したように、ビスポークで得た多くの声をどのように具現化するのか試行錯誤した結果なのだと思います。私は言葉の力を信じていまして、「もっとこうしたい。もっとこうだといいのにな」というご要望にどう応えるのかが醍醐味でもありますから。
    今後もトゥモローランドさんとその答えを共に探求していけたら嬉しいですね。



  • ITEM


  • ビスポークの正統派な手法を用いて、股上を深めに取った見た目はよりクラシックなイメージを演出し、膝から裾口にかけてのストレートラインはインプリーツの丸みのあるラインと重ねり、やわらかいドレープのでる洒脱な仕上がり。
    その普遍的な意匠がカジュアルにも対応する懐の広さを獲得しています。
    脚全体の印象を左右すると言われているプリーツを、インプリーツにすることで曲線的なラインが生まれ、フォルムに丸みを感じさせるものに留意。
    素材にはヨーロッパリネンの基準をクリアした証「MASTER OF LINEN」の商標が与えられたベルギー〈LIBECO〉社の『BELGIAN LINEN』を使用し、見た目も体感的にも清涼感を備えています。
    トゥモローランドが大事にしてきたエレガントで他にはない発色の良さが際立つ、洗練されたカラーパンツとなっています。
  • ドレッシーでエレガンスを感じさせるショーツを目指して作ったバミューダです。
    テーラード的要素を踏襲しつつ作成し、直線的に落ちる2プリーツの効果で縦のラインが強調され端正な佇まいに。
    脇への膨らみを極力抑えた型紙、そして前身と後身の最適なバランスを追求することで、腰廻りにすっきりと沿うシルエットとなりました。
    体の線を拾い過ぎない程度のゆとりを持たせており、計算された膝丈も相俟って大人の一本に相応しい仕上がりです。
    2プリーツスラックス同様のベルギーリネンを用いたベルトレスの仕様は軽く涼し気な雰囲気を堪能できます。
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