Side B - the essence of tomorrowland -
Special Interview
About PENDLETON × TOMORROWLAND
何をどう揃えて提案するのか。
世界中から素晴らしいものを集めご紹介するにあたり、軸となるスタンスは最も大事な要素の1つです。
妥協のない作り、付加価値を伴う接客、マーケットを読む審美眼。
トゥモローランドが大事にしている要素を紐解いていきます。
- TOMORROWLAND バイヤー
川辺 圭一郎
プレスを経て現職はトゥモローランド メンズバイヤーを担う。カルチャー方面にも知見があり、オンオフ問わずファッションとしての本質を捉えたバイイングが信条。 歌舞伎や古典落語にも精通した、渋谷生まれ渋谷育ちという生粋のシティーボーイ。- 美濃屋 企画開発チーム
大迫寿基
展開ブランドの歴史を熟知し、商品企画にも携わる自他共に認める服好き。アメリカンカジュアルなアイテムを、直球ではなくアレンジして現代的に着こなす関西人。「PENDLETON」社のアーカイブからオンブレチェックをピックし、特別に〈TOMORROWLAND〉の定番である英式紡績機にて柄を表現したファブリックを用いたジャケットが誕生しました。
バイヤー川辺が今回のコラボレーションの深淵なるバックストーリーをインタビューしていきます。
アメリカの良心と呼ばれるステータスブランド
―今や誰もが知るブランドである〈PENDLETON〉ですが、改めてその歴史や現在の世界的なポジションを教えてください。
大迫さん(以下、大迫。敬称略):歴史については数多くの媒体などで語られてきたので簡潔に申しますと、メイド・イン・USAの代名詞的なライフスタイルブランドとして、今もファミリービジネスを続けている老舗です。1909年に創業して以来、ファブリックを軸とした知名度とクオリティの高さで世界的に認知をされています。 近年の本国アメリカでは「いつかはペンドルトン」と言われているように、ブランケットも含めたホームウェアを一式揃えるのが、ある種のステータスになっています。ラグジュアリーブランドとして括るのは語弊があるかと思いますが、質の高さでそのような認識が浸透しているのが現状ですね。
―「アメリカの良心」と称されるだけあり、普遍的な質実剛健の中に現代的なリュクスを感じさせる存在だと感じます。
大迫:1863年にイギリスからオレゴン州に渡ったトーマス・ケイによって創設されたこともあり、ヨーロッパらしい空気感も内包したプロダクトを数多くリリースしてきました。
―なるほど。我々が展開するドレスクロージングラインの〈PILGRIM〉がインスパイヤされた巡礼始祖のヒストリーにも通じるものがありますね。
大迫:紡績から製品造りまで一貫して伝統的な行程で製造してきた〈PENDLETON〉は、アメリカ人の持つ最高の想像力と熱意を証明しているといえるでしょう。ネイティブアメリカンが大事にしてきた伝統的な柄をオフィシャルに使用できているのも、そういった真摯なスタンスがあったからこそです。
本国も納得したブラッシュアップの手法
―今回はアーカイブからオンブレチェックをピックし、特別に〈TOMORROWLAND〉の定番である英式紡績機(ブラッドフォードシステム)にて柄を表現したファブリックを使用したジャケットが完成しました。
大迫:仕上がったプロダクトを拝見して、素直に感嘆しましたね。柄のピックからオリジナルの生地を用意するまでの手間などは御社ならでは。実は今回のコラボレーションにはアメリカ本社からも現場のトップが関わっておりまして、リサーチから工程のチェックなども含め、仕上がりには非常に喜んでいました。
―本国のお墨付きをいただけたのは嬉しいですね。ベースモデルとして選んだのは「トップスタージャケット」ですが、こちらはどのような出自なのでしょうか?
大迫:その名が示す通り、50年〜60年代に銀幕のスターが着ているというコンセプトで誕生した名品です。いわゆるホワイトカラーの方々がハードワークの後で自宅に帰った後でリラックスする際に着られていたものになります。ディナージャケット的な使い方はもちろん、崩しすぎないスタイルで寛ぐのに最適だったのでしょう。今では当たり前になったアンコンジャケットの走りだった意欲作ですね。
―その名作をTOMORROWLANDではサイズバランスをアップデートし、良い意味での野暮ったさを残しつつ、男らしさとモダンさが共存する特別な1着に昇華させました。
大迫:ジーンズとの合わせはもちろん、ウールパンツとのドレッシーなスタイルにもフィットする逸品に仕上がりましたね。妥協なくクオリティを突き詰めるために新たな工場さんを探して試行錯誤した甲斐がありました。工場長さんも「この生地でこの縫製クオリティを求めるならどうしていこうか」と提案や試作品制作など含め非常に前向きに携わってくれたので、個人的にも思い出深いアイテムです。
―手前味噌ですが、〈PENDLETON〉が培ってきたレガシーと我らの標榜するエレガンスの融合。それを実現したブラッドフォードシステムや工場さんらの尽力が生んだ名品かと思います。
大迫:進化をし続ける老舗として共鳴する部分が多いかと思いますので、その根幹となるブレないアイデンティが結実されるようなコラボレーションを続けたいですね。御社が得意としているニットなどで、ステータスや付加価値が上がり男のロマンを感じるプロダクトができれば幸いです。
Extra Chapter
プロダクトを完成させるのに、素材選びは大事なファクター。今回のエクスクルーシブモデルでは、ブラッドフォードシステムという手間のかかる工程で素材開発を敢行しました。開発を担っていただいたタキヒヨーの大門さんにも話を伺います。
―〈PENDLETON〉が持つアーカイブからチョイスした柄を選び、実際に生地として作り出すことが決まった後、求めるクオリティにはブラッドフォードシステムが欠かせないという着地になりました。改めてこの手法や工程について教えてください。
大門さん(以下、大門。敬称略):英式紡績機は、産業革命の初期、1769年に特許を取得し1771年にクロムフォード工場で稼働した、リチャード・アークライトの水力紡績機と同じ方式で糸づくりを行います。現在、世界中で稼働している梳毛紡績機のほとんどは生産効率の高い仏式紡績機で、99%以上を占めるとも言われていますが、その仏式との最も大きな違いは紡錘の移動と回転によって撚りをかけるフライヤー。これにより、たっぷりと空気を含んだ、優しく軽やかな糸になるのです。
―不均一な原料・糸に紡績された原料で作られた生地は、良い意味で荒々しく不均一でハッシュな手触りになっているようにも感じますね。
大門:仏式に比べて多めの油脂を原料に与えて繊維一本一本へのストレスを最小限に抑えられるため、繊維をオイルで包むことでダメージを軽減し、天然の繊維の持つ特性を最大限に活かした糸づくりが可能となっています。大量生産は出来ませんが風合いや独特な味は出ます。
―シェットランドを用いて〈PENDLETON〉の柄を表現するのにご苦労はありましたか?
大門:1色に見える部分も複数の染めワタから色目を選んで表現しているので、柄となるとその選択肢はほぼ無限になります。前述のオイルスピニングなどといった工程を踏まえると糸から生地になるまで90日以上を要しました。納期との戦いにはヒヤヒヤしました(笑)
―いつもこちらの無理な要望を超える堅実なスタンスに感服いたします。
大門:TOMORROWLANDは商品開発において非常に攻めているなと感じる事が多いので、今後もワクワクするようなアイテムを共に生み出していけたら嬉しいです。
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